ベネズエラのインフレから新興国家の潜在的危機を学ぶ。

(「ニコラス・マドゥロ現大統領」
出典:Wikipedia)

 

 

こんにちは、品川です。

 

FXにかかわっていると結局インフレに始まりインフレに終るような気がしています。

 

トルコリラでも、南アフリカランドでも、そうです。

 

そのくらい気になるインフレの話なので、現在話題のベネズエラ(Venezuela)に焦点を合わせてかんがえてみましょう。

 


・売る(輸出する)モノのない国はインフレになる。


 

まず、トルコで見たことをすこしおさらいしてみたいとおもいます(この記事)。

 

結論だけ述べると、次のとおりです。

 

輸入ばかりしている国の通貨は、価値が下がる、つまり通貨安になることで、インフレになる。

 

日本だって輸入ばかりしている・・・と言われそうですが、日本の場合、強靭な自国産業がありますから、売る(輸出する)ものがあります。

 

トルコも、かろうじてなにか売るものあるかも知れません。

 

しかしベネズエラは、ほとんど石油モノカルチャーです。

 

次の説明が分かりやすかったです。

 

石油産出国のベネズエラ~なぜ経済破綻したのか
2019/01/11 16:01

宮家)僕が最初にベネズエラ人に会ったのは40年前のことで、あの頃は良い国でした。しかしチャベスさんの時代に反米の社会主義国家になってしまって、アメリカに喧嘩を売る一方でばら撒きをやったわけです。

石油の値段が上がっていた頃は良かったのですが、物はもう買えるから結局国内で物を作らなくなってしまったのです。そうして輸入に頼るとどうなるかというと、石油の値段が下がってしまえば自分たちでは何も作れなくなるのです。それでいまのインフレが起きた。

 

 

対談式の記事(放送記録)で、読みやすいです。

 

要するにベネズエラのモノ(石油)は、誰も買わなくなった(もとから質も好まれるものではなかったようです)、あるいは安価な値段でしか買わなくなったので、インターバンク経由で、ベネズエラの通貨安が進んで行ったわけです。

 


・年率換算のCPIで100万%。


 

インフレが年率換算の消費者(が買う時点での)物価指数=CPIで計算されることは、南アフリカランドの記事で説明しました。

 

そして前回の記事(南アフリカランドの利下げ)でも触れましたが、ベネズエラはIMF(国連機関である国際通貨基金)の予想で、年率換算でCPIが100万%と算出されました。

 

参考:ベネズエラのインフレ率見通し1000万%から100万%に修正

 

やはり前述の記事の説明が分かりやすいです。

 

石油産出国のベネズエラ~なぜ経済破綻したのか
2019/01/11 16:01

飯田)インフレ率は前の年と比較した物価の上昇率で、170万パーセントというと、日本円で言えば去年1円だったものが170万円になることです。近年200万、300万とも言われる人たちが国外に脱出したと言われています。

 

弁当屋で待っている時に聞くAMラジオみたいな一節でいい感じです。

 

それにしても、100円のジュースが、1億7千万円になるインフレ・・・。

 

これは買えない、というより、通貨が紙切れになった、ということですよね。

 

ちなみに次の記事も読んで損はないとおもいます。

 

参考:ベネズエラ、19年にもインフレ率1000万%に IMF推計

 

やっぱり日経さんの記事のクオリティーはすばらしい。

 

ちなみにこの日経さんの記事で言及されている1000万%が、NHKの報告で100万%に改善した・・・ということになります。

 

改善とは程遠いのですが。

 


・コストプッシュ・インフレーション?


 

前回、南アフリカランドの利下げでもの触れましたが、インフレには景気のよいもの悪いものがあります。

 

景気のよいものがディマンドプル・インフレーションです。

 

なかなか信頼できる記事がないですが、次のニューズウィークなんかがよいとおもいます。

 

そろそろ価値観の転換が必要。インフレ経済はすでに始まっている

ディマンドプル・インフレは、財政政策や金融政策などによって総需要が拡大し、それに伴って物価が上昇するタイプのインフレを指している。

需要が拡大し、モノやサービスが足りなくなるので、企業は値上げを実施し、その結果として経済全体の物価が上がっていく。需要サイドを主な要因としているのでディマンド(需要)プル・インフレと呼んでいる。このタイプのインフレは、景気が過熱している時に起こりやすいという特徴がある。

 

日本やアメリカといった先進国でいうインフレは、間違いなくこっちですね。バブルを頂点としています。

 

それに対して、ややこしいのが南アフリカ(ランド)で、インフレターゲットなんて言っている場合は、記事を書いて来た経験からいうと、ディマンドプル・インフレーションを意識しているように思われます(実際、インフレが進むと利上げするのが普通だった)。でなければ、インフレターゲットはマイナスで提示されるのが普通のはずです。

 

さて、もうひとつのインフレがコストプッシュ・インフレーションです。

 

同じくニューズウィークさんから。

 

そろそろ価値観の転換が必要。インフレ経済はすでに始まっている

これに対してコストプッシュ・インフレは供給サイドを要因とするインフレである。例えば資源の枯渇などで原材料価格が上昇した場合、企業は利益が減ってしまうため、この分を価格に転嫁しようとする。この動きが社会体に広がって物価が上昇していく。

1970年代に発生したオイルショックによるインフレは典型的なコストプッシュ・インフレといってよい。人手不足による人件費の高騰も、原材料費の価格高騰と同じ効果をもたらすのでコストプッシュ・インフレである。

 

ようするに景気が悪い話がコストプッシュ・インフレーションですね。トルコのとき見た有名なワイマール・ドイツのハイパーインフレーションもこの類ですね。

 

あきらかにベネズエラのインフレはこっちの類でしょう。だから、CPI年率換算100万%は、コストプッシュ・インフレーションだと理解できます。

 


・政府によるバラ撒き?。


本当にベネズエラ中央銀行って
あったのか・・・。
或る意味、新鮮な驚き。

 

 

ハイパーインフレーションでよく言われる政府によるバラ撒きですが、もうすこしよく見た方がよいとおもいます。

 

私達がFXを通じて学んで来たことによれば、市中に流通する通貨量を調節するのは、政府ではなく中央銀行です(この記事)。

 

だから、今回のベネズエラのハイパーインフレーションの根本原因は、中央銀行の失策にあります。ただ、いろいろなところで語られているとおり、ニコラス・マドゥロ大統領による中央集権、独裁体制の構築により、実質、中央銀行も政府の一部に組み込まれていたということは想像に難くありません。

 

結局、ここに、トルコでのエルドアン大統領による中央銀行の掌握、また南アフリカにおける中央銀行の国有化・・・と言ったことに対する市場の懸念は起因しているように見えます。

 

エルドアンやラマポーザが、ニコラス・マドゥロかどうか、ということは置いておくにしても、です。

 

・・・・・

 

それでは、今回はここまでです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m

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