トルコリラ下落の背景(イスタンブール市長選やり直し)

 

 

こんばんは、品川です。

 

この連載以来、ずっとトルコリラ(TRY/JPY)下落の背景を追っています。

 

ひとつの要因としては、やっぱりイスタンブール市長選やりなおしみたいな、政治的不安も否めないようです。

 

 

 

 


・主要都市で市長をのがす。


イスタンブールは首都ではないが
トルコ最大の都市。
(出典:DailyNews)

 

 

トルコ地方選挙は、今年(2019年)3月31日に行われました。

 

衝撃的だったのは、主要都市で市長枠を与党、公正発展党(AKP:Adalet ve Kalkınma Partisi, Justice and Development Party)が落とした、ということです。

 

JETROさんから。

 

トルコの2019年統一地方選挙――常勝与党の敗北感

2019年4月

トルコにおいて統一地方選挙が2019年3月31日に実施された。高等選挙管理委員会が公表した非公式結果(開票率100%)によると、与党連合(公正発展党[AKP]と民族主義者行動党[MHP])の全国得票率(県議会選挙得票率を基準)は51.6%(AKPが44.3%、MHPが7.3%)で、2018年6月の国会選挙での与党連合の得票率53.7%(42.6%と11.1%)を2ポイント下回った。

・・・

今回の選挙で、全国81県のうち与党陣営が市長職を握る県庁所在市の数は、それまでの55から50に純減した(5増10減)。与党陣営が県庁所在市を失った10県のうち4県(イスタンブル、アンカラ、アンタリヤ、アダナ)の人口規模は全県中6位以内である。  

特に、上位2位のイスタンブル県(経済の中心)とアンカラ県(首都)の県庁所在市を失ったことはAKPにとって大きな痛手だった

 

 

で、首都アンカラ敗北も痛手なのですが、エルドアン大統領率いるAKPがいちゃもんをつけたのはイスタンブールでした。

 

勝利したのは、上掲画像のとおりイマモール(Ekrem Imamoglu)氏。

 

野党第一党、共和人民党(CHP:Cumhuriyet Halk Partisi, Republican People’s Party)の候補でした。

 

 

 

 


・再選挙決定。


 

その後、信じられない話ですが、選挙過程に対する(エルドアン率いる)与党AKPの批判がとおり、イスタンブール市長再選挙が決定しました。

 

Reutersから。

 

 

イスタンブール市長選のやり直し決定、トルコリラ大幅安

[アンカラ/イスタンブール 6日 ロイター] – トルコの最高選挙管理委員会(YSK)は6日、3月に実施された最大都市イスタンブールの市長選結果を無効とし、6月23日にやり直し選挙を実施すると発表した。これを受けてトルコリラは急落した。

同市長選は、最大野党・共和人民党(CHP)のイマモール候補がエルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)候補のユルドゥルム元首相に僅差で勝利。その後、AKPが異議を申し立て、再選挙を求めていた。

この日の決定に対し、CHP側は「明らかな独裁政治だ」と強く非難している。

決定を受け、トルコリラTRYTOM=D3は下落。1730GMT(日本時間7日午前2時30分)時点で1ドル=6.1075リラに沈み、1日の下落率としては1カ月超ぶりの大きさとなった。

リラは3月の選挙の前週からは10%超下落した。選管の判断を巡る不透明感が漂う中、やり直し選挙となった場合は資金や関心が経済改革ではなく選挙活動に注がれるとの懸念が広がっていた。

ブルー・ベイ・アセット・マネジメントのティモシー・アッシュ氏は、今回の決定について「トルコの民主主義への見方を傷つけるもので、7月にかけてのマクロ的金融安定性へのリスクを踏まえると、トルコ経済は脆弱さが続くだろう」と指摘した。

YSKの独立性に疑念が生じる中、CHPやその支持者が再選挙にどのように対応するかは不透明だ。

CHP議員は地元テレビで、AKPがYSKのメンバーに対し、再選挙に反対票を投じれば投獄すると脅しをかけたと主張した。

票の再集計を経て4月に市長に就任したイマモール氏は、AKPの圧力で選挙結果を無効にしたとしてYSKを非難。数百人の支持者を前に「YSKは恥を知るべきだ。彼らは最初から政治の圧力下にあった」と述べた。

 

 

たしかにこの記事のチャートをみると、6日に大きな下ヒゲが出ていますね。

 

その後は、米中貿易摩擦の影響でズルズルと下落が続いた・・・という感じのようです(この記事この記事)。

 

ついでに日経さんの記事もみておきます。

 

トルコ与党、最大市長選敗北受け入れ拒否 6月再選挙 

2019/5/7 19:00

【イスタンブール=木寺もも子】トルコの最大都市イスタンブール市長選を巡り、選管当局は6日、野党候補の当選を無効とし、6月23日の再選挙実施を決めた。敗北結果の受け入れを拒否するエルドアン政権の与党・公正発展党(AKP)の圧力に屈した異例の決定で、トルコの民主主義や統治機構への信頼が一段と損なわれるのは避けられない。

「彼らは脅しに屈した」。イスタンブール市長に当選したはずの野党・共和人民党(CHP)のイマモール氏は6日夜、支持者の前で演説し再投票の決定に反発した。CHP幹部は「明らかな独裁政治だ」とエルドアン氏を痛烈に批判した。

2017年の憲法改正を経て自らへの権限集中を進めるなど、強権統治に傾斜するエルドアン大統領への信任投票となった地方選で、イスタンブール市長選は最大の焦点だった。AKPは大物候補のユルドゥルム元首相を立てたものの、イマモール氏に0.3ポイントの僅差で敗れた。AKPは首都アンカラ市長選でも野党に敗北した。

「人々は選挙のやり直しを求めている」。4日、イスタンブールで講演したエルドアン氏は、選挙には不正があったなどと強調した。「腐敗をただすことで正当性を証明できる」と選管当局にくぎを刺していた。

選管当局は6日、エルドアン氏の与党・AKPの申し立てを受け、票の集計体制に問題があったなどとしてイスタンブール市長選のやり直しを認めた。公務員が務めることになっている開票所の係員に不適切な人員が混ざっていたことなどが理由としている。

だが、事実としても選挙自体を無効にするのは異例の判断だ。通貨リラの対ドル相場は4月8日、エルドアン氏が選挙結果を否定するような発言をした後、前営業日比で一時1%超下落した。5月6日夜に再投票決定の情報が伝わると、同3%を超えて急落した。

イスタンブールは国内総生産(GDP)の3割を稼ぐ経済の中心で、オスマン帝国の首都でもあった特別な都市だ。エルドアン氏自身がかつて市長職を務め、国政への踏み台にした。

エルドアン氏は「イスタンブールを制する者はトルコを制する」と述べ、メディアへの圧倒的な影響力を行使して必勝を期していた。それだけに今回の敗北が長期政権の退潮と受け止められることを恐れたとみられる。

ただ再選挙はエルドアン氏にとって大きな「ばくち」といえる。AKPは組織力をフル回転させて逆転を試みるが、イマモール氏への同情票が増える可能性もある。開票や集計には各政党の代表者が立ち会うなど監視体制は強固だ。

そもそもAKPが苦戦した背景には経済低迷への不満がある。通貨リラの急落でインフレ率は一時25%まで上昇し、生活に大きな打撃となった。18年10~12月期のGDP成長率は9四半期ぶりのマイナスに陥った。再投票でも敗北すればエルドアン氏は求心力を失いかねない。

選挙のやり直し要求自体にも、AKP内から異例の反対意見が出ていた。結果次第では23年に予定される大統領選・議会選が大幅に前倒しになるとの観測も浮上する。

エルドアン氏は「選挙結果に対する異議申し立てはどの民主主義国家でも行われている」などと強弁したが、国際的な批判を招きそうだ。欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は6日「この重大な決断を正当化する説明はすぐに公に精査されるべきだ」などとする声明を発表したうえ、再選挙では国際的な選挙監視団を受け入れるよう期待を示した。

 

 

ふたつ読み取るべきことがあって、

 

① ひとつは、再選挙は6月23日。

② もうひとつは、世論がいよいよエルドアン大統領から離れつつある。

 

ということです。

 

トルコ国内でも現在のリラ安は、限界をとうに超えたものなのでしょう。

 

・・・・・

 

それでは、今回はここまでです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m

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