(出典:Wikipedia)
こんばんは、品川です。SARB(The South African Reserve Bank 南アフリカ準備銀行)が、(2018年)3月28日、0.25ポイントの利下げを敢行しました。
本連載では、その背景と成ったファンダメンタルズを、ハニャホSARB総裁の声明を中心に、追っています。
連載第3回目です。
・つづき。
前回、ハニャホSARB総裁の声明文の出だしを読みました。今回はその続きです。
付加価値税を15%に引き上げたことは、インフレに対するネガティブな効果と成ろう。しかし、好調な為替が、そのネガティブな効果を打ち消すであろう。
While the increase in the value-added tax (VAT) rate to 15% places temporary upside pressure on inflation, this is mitigated by the stronger exchange rate which has contributed to the changing inflation risk profile.
原文は情報ソースとしか取っていないので、逐語訳はしていません。
さて、前回お話したとおり、ランドであってもインフレは基本的に歓迎のわけですが、付加価値税を増加させたことが、そのインフレの伸びを頭打ちにしまう、とハニャホ総裁はここで述べています。
付加価値税とは何ぞや?と問う前に、「好調な為替(stronger exchange rate)」という分かりにくい文言を先に片付けておきましょう。
「好調な為替(stronger exchange rate)」とは、以前お話ししたことを前提にするなら、ランド高だと理解したいです。つまり、自国通貨を積極的に外国が買い求めることによるランド高です。
では、なぜランド高が、インフレを加速させるのか?
日本だったら、逆ですよね(円安歓迎)。これは、日本が輸出国だからでしょう。
ならば、ランド高が、景気を好転させる(インフレを加速させる)と考えられる理由はひとつ、南アフリカは輸入国だということです。
手元の資料は、一応「そうだ」と言っています。
2004年集計時の南アフリカ
:輸出額40,206(百万ドル)<輸入額47,794(百万ドル)=輸入国。
2006年集計時の日本
:輸出額646,693(百万ドル)>輸入額579,010(百万ドル)=輸出国。
つまり、ランド高→国内景気好転→インフレ・・・と理解できるのです。
・付加価値税(VAT)とは?
さてでは、ハニャホ総裁が言及している、15%に引き上げられた「付加価値税 the value-added tax (VAT)」とは一体、何のことでしょうか。
手っ取り早く言ってしまえば。それは「消費税」のことです。
JETRO(日本貿易振興機構)の説明が良いでしょう。
付加価値税(Value-Added Tax:VAT):日本における消費税に該当するもので、課税対象となる商品・サービスの供給、ならびに南アへの商品・サービスの輸入に対して、14%の税率が課せられる(2018年4月1日からは15%に引き上げ予定)。
・南アのVAT引き上げは、それなりにニュースに成った。
このVAT(付加価値税)が、15%に引き上げられる、という決定は、それなりに世界のニュースに成りました。日経とBloombergから引用します。
「南ア、付加価値税4月引き上げ 財政再建狙う」
日本経済新聞2018/2/22 9:14
【カイロ=飛田雅則】南アフリカ財務省は21日、2018年度予算を発表した。1993年から14%に据え置かれてきた付加価値税(VAT)を、今年4月から15%に引き上げる。汚職疑惑で辞任を迫られたズマ前政権に代わり、就任したばかりのラマポーザ大統領は財政再建を急ぐ。市場は好感し通貨ランドは対ドルで上昇した。
議会で演説したギガバ財務相は「避けることのできないVATの引き上げを決めた」と語った。歳出の見直しや増税による歳入増で、2018年度の財政赤字は国内総生産(GDP)比で3.6%と、17年度の4.3%から改善すると見込んでいる。
18年度は1.5%の経済成長を予想する。1%成長を見込む17年度から改善する。農業生産や海外投資の増加を見込んでいる。
「南アフリカ:VATを増税、人種隔離廃止以降で初-経済成長加速へ」
Bloomberg Arabile Gumede 2018年2月22日 0:19 JST
南アフリカの与党アフリカ民族会議(ANC)は、来年の総選挙を前に付加価値税(VAT)を引き上げるという政治的な賭けに出た。ラマポーザ新大統領は債務状況を安定させ、一段の格下げの回避に努めている。
ギガバ財務相の発表によると、VATは14%から15%に引き上げられる。VAT引き上げは貧困層への打撃が大きいと見なされるが、アパルトヘイト(人種隔離)廃止以降で初めてこの増税に踏み切った。燃料や高級品に対する税金も引き上げられる一方、向こう3年にわたって歳出は抑制する。
財務省はまた、今年の経済成長率見通しを1.5%と従来の1.1%から上方修正。2017年の推定1%から加速すると見込む。政策の確実性と投資呼び込みを狙った措置が効果を発揮し、20年には成長率が2.1%に達する公算が大きいとの見方も示した。
この発表を受けて南ア国債とランドは上昇した。
このVAT引き上げ、まあ、ぜったいズマ前大統領(JacobZuma)にはあり得ない、非人気取りの政策なので、当然、ラマポーザ新大統領での決定のわけです。
ただ、今年(2018年)の2月22日辺りは、まだ南アフリカの政局はドタバタしていて、
① ラマポーザ氏(CyrilRamaphosa)が新大統領に成ったのは、2月15日のやっとのこと。
② 新内閣発表は2月26日。だから上掲記事では、まだ財務大臣はギガバ氏(MalusiGigaba)。ちなみに現大臣は、ネネ氏(NhlanhlaNene)。
ということを忘れてはなりません。
この①と②の間に起こった出来事が、VAT(付加価値税)引き上げだったわけですね。恐らくは、ラマポーザ新大統領の最初のアピール、といった所だったのでしょう。
ちなみに上掲文章で、ハニャホ総裁は「VAT引き上げが一時的に経済にネガティブに働くだろう」という見解を示していますが、投資家たちは、これ(VAT引き上げ)を好感した、と日経やBloombergは報じています。
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それでは、今回はここまでです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m
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