(「はにかむズマ氏」
出典:Africa News Network 7 TV)
こんばんは、品川です。前回はお願いして、編集長に記事を書いてもらいました。スミマセン。今回は私が担当させていただきます。と言っても今回も、かなり編集長の力を借りています。いまはメールでもスマホでも、なんでも連絡が取れるので便利な時代です。・・・さて、ジェイコブズマ(Jacob Zuma)大統領が辞任しました。現地時間2018年2月14日のことでした。
ニューズウィーク日本版に六辻彰二氏が寄稿した記事が、現状を分かりやすく分析しています。前々大統領タボムベキ(Thabo Mbeki 1942- )氏が黒人エリート層代表だったのに対し、ズマ氏は黒人庶民層を支持基盤にしていました。これは私の解釈ですが、古くは豊臣秀吉、新しくは田中角栄みたいな政治家、それがズマ氏だったのではないでしょうか。
「豊臣秀吉や田中角栄とは話が違うんじゃ・・・」とおっしゃる方がたくさん居られると思います。しかし実際のズマ氏は、多くのメディアで叩かれるような悪の権化の印象とは程遠く、屈託ない笑顔でひとを引き付ける天性の素質を持っているように見えました。
私には「田舎の村長さん」の一言に尽きます。教育無償化に典型的なように、情に弱く場当たり的な政策決定をする。金銭面では善悪の区別が付かない・・・そういう無邪気さ、悪く言えば無知さが、彼の魅力でもあり欠点でもあったのではないでしょうか。
ズマ氏の退任演説を読んでみましょう。
ソースは、どこにでもありますが、本記事では、News24の「ズマの退任演説全文(READ: Zuma’s resignation speech in full)」を参照しました。30分ほどの演説でした。要点を区切って読んで行きましょう。
1.トップ6の退任勧告と、その後の不信任決議案の計画が、辞任の直接的な引き金だった。
(2018年)2月12日に行われたトップ6の会議、その後のラマポーザ氏による退任勧告、ズマ氏の拒絶、それを受けてのANCの不信任決議案提出決定が、辞任の直接的な引き金だった、とズマ氏は初めに述べています。
南アフリカのみなさん、私は数週間悩んだ後、自分の未来についてみなさんにお知らせしたいことがあります。
Fellow South Africans, I address you after weeks of speculation about my future as President of the Republic of South Africa.
特に、2月13日にANCが決定した辞任要求を重く受け止めています。
In particular, I make reference to the much publicized and awaited decision of the African National Congress issued on 13 February 2018. It is now public knowledge that the National Executive Committee of the ANC resolved to recall me as the President of the Republic.
更に、この2月13日のANCの決定に先駆け、「明日2月15日に不信任案がANCによって下院議会に提出されること」を知りました。
I have also learned that, before I respond to the initial decision, a new decision has been made by the ANC, whose effect is that I have now been compelled to resign by way of a motion of no confidence, set down for tomorrow, 15 February 2018.
2.自分に後ろめたいところは無い。ANCの退任勧告の不透明さが、拒絶の主な理由だった。
直前インタビューでも語っていた通り、ズマ氏は、ANCからの煮え切らない退任勧告が腑に落ちなかったようです。当然、そこには「自分の汚職疑惑が理由なら、交わす自信があるから、それは退任理由にはならない」というズマ氏独特のロジックがあったのでしょうが・・・。
どんな政治的指導者も簡単な解決法を探してはならない。なぜなら、政治的指導者は就任時の役得(perks)を最後まで持ち続けて任期を終えることはできないからだ。
Most importantly, no leader should seek an easy way out simply because they could not face life at the end of their term without the perks that come with their political office.
大統領を辞めるのが怖いのではない。私はただ、仲間たちに、自分が何で罪に問われているのか(transgression)をもっとはっきりと言って欲しかったし、大統領辞任が切迫していることの理由をはっきり言って欲しかった。
I do not fear exiting political office. However, I have only asked my party to articulate my transgressions and the reason for its immediate instruction that I vacate office.
(職名でのラマポーザやマガシュルへの言及。)
不信任案提出や弾劾が怖いのではない。なぜなら、それは民主主義のメカニズムに沿って起こることだからだ。その点において、私は自分に恥じるところは無いと思っている(意訳)。
I fear no motion of no confidence or impeachment, for they are the lawful mechanisms for the people of this beautiful country to remove their President. I have served the people of South Africa to the best of my abilities.
3.演説の最後に、即時辞任を表明。
30分の長いスピーチの最後に、辞任の表明がありました。途中、アフリカ語(具体的に何語と言うのか分かりませんが)でのスピーチも挟まれ、庶民派だった自分を刻印しようとしているかのようにも見えました。
2009年から、私の大統領任期を支えてくれた市民の皆様に感謝したい。
I also thank the citizens of South Africa for the privilege of serving as the President of the Republic since 2009.
(感謝の言葉)
そういうわけで、私は大統領の即時辞任を決定した。
I have therefore come to the decision to resign as President of the Republic with immediate effect.
私はまだ、トップ6の決定には同意し難い。しかし私はANCのメンバーなのだ。
Even though I disagree with the decision of the Leadership of my organization, I have always been a disciplined member of the ANC.
私は辞任しても一生、南アフリカの人民の公僕であるし、ANCの一員であり続ける。
As I leave I will continue to serve the people of South Africa as well as the ANC, the organization I have served all my life.
I will dedicate all of my energy to work towards the attainment of the policies of our organization, in particular the Radical Economic Transformation agenda.
ありがとう。
I thank you, ngiyabonga.
・こうしてズマ氏は退任しました。
翻ってスピーチの冒頭に、こんなやり取りがありました。
ズマ氏の人柄をよく表しているので、最後に引用します。
ズマ「グッドイブニング、レディース&ジェントルマン。」
ズマ「なんでそんなにシリアスなんだい?こんばんは、ってところじゃないか。」
記者団「ワッハッハッハ・・・」
ズマ「何が起こるっていうんだい?」
良くも悪くも、こういう人柄の人物を南アフリカのひとたちは求めていた時代が確かにあったのでしょう。
しかし今度はそれを乗り越え、成熟した先進国への一歩を踏み出さなければならない時が来た、ということのなのでしょうか。
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それでは。
今回はここまでです。
次回は、ラマポーザ新大統領の就任演説周辺を見てみたいと思います。
では。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m
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