日銀17年ぶりの利上げでマイナス金利を解除(2024/3/19)

総じて為替相場は逆張りの
動きに出ている。
(出典:外為どっとコム)

 

 

 

こんにちは、品川です。

 

異例の円安が節目を迎えようとしています。

 

現在の円安(対ドル中心)はロシアのウクライナ侵攻に対するコストプッシュインフレに対する日本(金融緩和)と、欧米諸国(金融引き締め)の政策の違いに端を発するものです。

 

参考:現在(2022/7/3)の円安について③:なぜドルに円が流れるのか?

 

それに対する日本側での金融引き締めの動きが出たのは、ようやく去年の12月でした。

 

参考:ようやく円安の時代が終わるか?(2023/12/7 FX)

 

この度、ようやく実現に至りました。

 

事実関係1

 

事実関係だけまとめておきましょう。

 

【速報】日銀17年ぶりの利上げ マイナス金利を解除 YCC・ETF買い入れも終了 日銀「マイナス金利など役割果たした」円安1ドル=150円台に

3/19(火) 12:35

日本銀行は、きょうまで開かれた金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除するなど大規模な金融緩和策の見直しを決定しました。

2007年以来、およそ17年ぶりの利上げとなります。 日銀はこれまでイールドカーブ・コントロールと呼ばれる長短金利操作、具体的には▼短期金利をマイナス0.1%、▼そして長期金利をゼロ%程度に誘導することを柱とする金融緩和策を行ってきましたが、長期金利の誘導目標を撤廃。 短期金利については今後、代表的な指標である、「無担保コール翌日物」の金利を0%~0.1%程度で推移するよう促します。短期金利の利上げは2007年以来17年ぶりです。 また、これに加えてETF=上場投資信託などリスク資産の買い入れ終了も決定しました。

見直しの理由について日銀は「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断。 マイナス金利政策やイールドカーブコントロールなどの大規模な金融緩和は、その役割を果たしたと考えている」と説明しています。 日本銀行は、現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面緩和的な金融環境が継続すると考えているとしています。 今回、マイナス金利解除にあたって賃上げ状況を注視するとしてきた日銀の背中を強く押したのが、先週金曜日に連合が発表した春闘の「賃上げ率」です。 去年の3.8%を大幅に上回る5.28%に達し33年ぶりという記録的な高水準となりました。

 

賃上げは、単純に物価高だからじゃないの?

 

事実関係2

 

別の記事も読んでみましょう。

 

訂正-焦点:日銀、試行錯誤の「異次元緩和」決別 産業界の窮状も後押し

2024年3月19日午後 5:10

[東京 19日 ロイター] – 植田和男総裁が就任してから約1年、日銀が17年ぶりの利上げとなるマイナス金利政策の解除を決めた。

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日銀は予告通り3月18ー19日(訂正)に開いた決定会合でマイナス金利を解除した。長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)も廃止し、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の買い入れもやめた。2013年4月に国債の購入して市場に資金を流す量を劇的に増やすことから始まった異次元緩和に終止符を打ち、短期金利を誘導する伝統的な金融政策に回帰した。

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植田総裁は19日午後の会見で、「これまでの大規模な緩和政策は役割を果たした」と説明。「緩和的な環境を維持するのが大事だという点には留意しつつ、普通の金融政策を行っていくことになる」と語った。

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能登半島地震で始まった24年の年明け以降、日銀は計画を実行に移し始めた。1月の決定会合は政策変更を見送ったが、直後の会見で植田総裁がマイナス金利解除が近いことを示唆した。冒頭の展望リポートの懇談会で市場関係者は3月の可能性も排除しないと受け止めた。
2月上旬に奈良県で講演と会見をした内田真一副総裁は、「仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになる」と表明した。YCCを見直しても国債の買い入れは続けるとし、リスク資産の購入を止めてもすぐには売却しないことに含みを持たせた。
そして3月16日、日銀が最も重視していた連合の春闘1次集計は賃上げ率が33年ぶりに5%を超えた。物価上昇と賃金の好循環が生まれつつあると判断した日銀は、正常化に踏み切ることを決めた。YCCは撤廃、政策金利のターゲットを無担保コール翌日物金利とし、ゼロ―プラス0.1%を誘導水準とする。

 

なんかまとまりない記事なので、こんなのでいいでしょう。とにかく為替相場に結果として出ないと。

 

2024/3/19佐藤和正氏コメント

 

マイナス金利解除当日の外為オンライン佐藤和正氏のコメントです。

 

2024年3月19日(火) 「WTI原油価格83ドル台まで上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場ドル円は東京時間朝方に149円33銭前後を付けたが、NYでは上値も重く小動き。
ユーロドルも1.09台を回復したが勢いもなく1.08台に押し戻される。
株式市場では3指数が揃って上昇。連日売られていたハイテク株に買いが入り、ナスダックは130ポイント高。
債券は小幅に続落。長期金利は4.32%台に。
金は反発し、原油はイランの減産方針を材料に大幅高。一時は昨年11月以来となる83ドル台まで上昇。

本日のコメント

日経新聞は今朝の一面でも「日銀、大規模緩和解除へ」といった見出しで、日銀が今日の会合最終日に「マイナス金利解除」を決める見通しだと報じています。ここまでくれば、最早報道通り「YCCの撤廃」も含めて政策転換に踏み切ることは間違いないと思われ、市場参加者の焦点は午後3時半から行われる植田総裁の会見ということになります。

金融政策の転換はすでに織り込まれていたことから、ドル円へのインパクトは限定的でした。昨日の朝方には149円33銭近辺まで買われる場面もありましたが、NYではむしろ148円台後半まで押し戻される局面もあり、為替に関してはFOMC待ちといった状況です。影響があったのは日本株の方でした。「マイナス金利解除」がほぼ見通せる状況の中でも、昨日の日経平均株価は1000円を超える大幅高となり、為替が円安に振れたことに加え、「マイナス金利解除を決定することで、不透明感が払拭された」といった「ポジション・トーク」的な声も聞かれ、政策修正後も緩和的なスタンスが続くことも追い風になったようです。

バイデン大統領は18日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行い、パレスチナ自治区ガザ南部ラファでの大規模な地上作戦は間違いであると、再び警告しました。バイデン氏は2月の電話会談でも「イスラエルのラファへの侵攻はレッドラインを越えることになる」という言葉を使って警告していました。サリバン大統領補佐官は、「大規模な地上作戦は間違いだ。罪のない市民の死者を増やし、すでに悲惨な人道危機を悪化させるとともにガザの混乱を深め、イスラエルを国際的にさらに孤立させるだろう」とホワイトハウスで述べています。(ブルームバーグ)ネタニヤフ氏は会談での要請に同意したとのことですが、これまでの言動からすれば、ネタニヤフ氏がそう簡単に要請を受け入れるとは思えません。またバイデン大統領も、もっと早い時期に強い警告を発すべきだったと思います。イスラエルへの対応が自身の支持率低下につながったことで、取って付けたように、厳しい姿勢に変わっています。

146円台半ばから反発し底堅く推移しているドル円は、米金利の上昇に支えられています。昨日の米債券市場でも国債は売られ、米長期金利は小幅に上昇しています。背景は、一時年内に6回の利下げを行い、都合「1.25%」の引き下げを見込んでいた市場が、CPI、PPIの上振れを受けて利下げ幅を縮小する動きに出ていることが挙げられます。JPモルガンやゴールドマンは年内の利下げ回数を「3回に下方修正」しています。結局、利下げには慎重な見方を維持していたFOMCの中心値であった3回に、サヤ寄せされた格好です。FRBが年内に利下げを行うことは、「タイミングだけの問題」かと思われますが、珍しく議会からも利下げ圧力がかかっています。ブルームバーグによると、エリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース両上院議員を含む米議員が、パウエルFRB議長に宛てた書簡で、「利下げに向けた明確かつ迅速なタイムテーブルを提示するよう」求めています。また、書簡では「理想的には5月のFOMCから開始するのが望ましい」とも述べています。今月9日にはバイデン大統領もFRBの金融政策に触れて「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」と述べ、ドル売りを誘ったことは記憶に新しく、FRBに対する政治的圧力が増しているのは明らかです。これも大統領選を控えていることと無関係ではないはずです。

本日のドル円は148円30銭~149円80銭程度を予想します。

 

 

2024/3/21(3/20はコメント予告なしに休みだった)

 

マイナス金利解除後の佐藤和正氏のコメントです。

 

2024年3月21日(木) 「FOMC5会合連続でFF金利据え置く」

ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場ドル円は大幅続伸。昨日の朝方のアジア市場で151円台に乗せ、NYでは151円82銭まで買われる。もっとも、FOMC後には150円74銭まで売られる場面もあり151円台前半で引ける。
ユーロドルも1.0838まで売られたが、その後反発。ユーロは対円では165円35銭近辺まで買われ、実に2008年8月以来の高値を付ける。
株式市場は3指数が揃って大幅続伸。パウエル議長の発言を受け買い安心感が広がる。ダウは401ドル買われ、他の2指数とともに最高値を更新する。
債券は小幅に買われ、長期金利は4.27%台に低下。
金は売られ、原油は3日続伸。

本日のコメント
「材料出尽くし」ではあるものの、想定以上に円売りが進み、ドル円は昨日のNYで151円82銭まで買われました。ここ2年間ドル高が進みながらも抜け切れなかった「151円70-95銭」の極めて重要な水準までドルが買われましたが、FOMC終了後のパウエル議長の「ハト派寄り」の発言が、もう一段のドル高を阻止した形でした。この発言がなかったら、もしかしたら152円テストがあったかもしれません。

先ずは祝日前の日銀会合を振り返りたいと思います。19日(火)の日銀金融政策決定会合では、多くのメディアが事前に報道していたように、「マイナス金利解除」と「イールドカーブコントロール」(YCC)の撤廃を決定しました。予想されたよりも発表が遅れ、午後12時35分ごろの発表となりました。ドル円は直後に149円前後から149円92銭まで買われ、日経平均株価もマイナス140円辺りからプラスに転じる動きを見せました。ドル円はその後押し戻される場面もありましたが、午後2時前には150円07銭までドル高が進み、その日のNYでは150円96銭まで続伸しています。事前予想通りだったということに加え、政策変更後も「緩和的環境を維持する」とした植田総裁の発言も円売りに「安心感」を与えたと見ています。短期金利の誘導目標レンジは0~0.1%で、YCCが撤廃されたものの急激に円金利が上昇する際には、「指し値オペ」などを起動時に駆使し適切に対応するといったものです。「17年ぶりの金利のある世界」は実現するものの、今後も円の金利がガンガン上がるイメージは多くの市場関係者が持っていません。

そして今朝3時にはFOMC会合の結果が発表されました。こちらも、政策金利の据え置きが既に織り込まれており、焦点はパウエル議長の会見での発言内容に注目が集まっていました。声明文では、「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」とし、その上で、「委員会は目標実現を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジを5.25-5.5%に据え置くことを決めた。FF金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとは見ていない」と述べています。

ここまではほぼ想定通りだったと思いますが、その後の記者会見でパウエル議長は、「インフレ率が目標の2%に向う全体的なストーリーは変わっていない。たとえ労働市場が堅調であっても、利下げ開始を止められないだろう」と、かなり「ハト派寄り」の発言を行いました。この発言は先の議会証言で「年内に利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」とした発言と整合しますが、さらに「ハト派色の強い」ものだった印象があります。

これまでの慎重なパウエル議長の物言いを考えた時、議会証言以降バイデン大統領やウォーレン議員、あるいはサンダース議員が、異例なことに、「FRBに利下げ圧力とも取れる発言を行ったことと関係があるのでは」、と考えるのは、うがち過ぎでしょうか。また、年内の利下げ回数も従来の3回を維持しています。上記発言が筆者の考え過ぎであるとすれば、パウエル議長は今後のインフレ率低下に余程自信があることになります。

ドル円は再び151円84銭まで上昇し、非常に重要な水準に差しかかったことで、介入警戒感が一気に高まってきたようです。すでに口先介入は何度かありましたが、今度は2022年以来の実弾介入にも注意が必要です。個人的には実弾介入があるとしても152円以上の水準かと思っていますが、今後円安がさらに進むと、足元の原油高もあり日本のインフレが一段と上昇する可能性もあります。そうなると日銀が再び利上げに追い込まれることも予想されます。「FRBの利下げとBOJ(日銀)の利上げ」、この構図は今後の円高を示唆しますが、日米金利差が劇的には縮小しないと見られており、今後は両中銀の動きと金利差の動向が相場の行方を決めそうです。

本日のドル円は150円~151円80銭程度を予想します。

 

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