Blossom Financeのレポートを通して仮想通貨を知る(2)終。

(Blossom Finance)

こんばんは品川です。(2018年)4月12日、ビットコインを初め一連の仮想通貨が上昇し始め、そのトレンドは今(5月15日)も続いています。

その転機にひとつとなったブロッソムファイナンス(Blossom Finance)のレポートを読むという企画でしたが前回から随分、時間が経ってしまいました。

投資の世界の話ですから、既に新鮮味が失われていますけれども、読む価値はあると思いますので、本記事でシメておきたい所存です。

(以下、典拠となったブロッソムファイナンスのレポートについては前回記事をご参照ください。)


・執筆者のMuhammad Abu Bakar氏について。


Muhammad Abu Bakar氏

(Blossom Finance)

前回、説明したことでもありますが、Matthew J. Martin氏(President & CEO)とツートップでブロッソムファイナンスを運営しているのが、今回、問題のレポートを作成したMufti Muhammad Abu Bakar氏です。

イスラムの世界は、ローマ法に由来する西欧とは異なった法文化を持っていて、経典コーランと預言者ムハンマドの言行(スンナ)に基づいたイスラム法というものが法規範となっています。このイスラム法が「シャーリア(Sharriah)」に他なりません。

シャーリア(イスラム法)の解釈と適用をするのが、イスラム法学者です。イスラム法学者は権威者からの「免許皆伝」という形で共同体の中で資格が与えられる非常に捉えがたい資格決定制度を持っているのですが、Mufti Muhammad Abu Bakar氏の場合、パキスタンの大学(Jamia Darul Uloom Karachi大学)における教授たちへの師事により、その資格を得た模様です。

なので、問題のレポート(前回記事を参照してください)を読む際に注目すべき点は次のことでしょう。

① イスラム世界のエンジニアが書いた論文ではない。

② むしろコンピュータ科学にはあまり精通していない文系人間であるイスラム法学者によって論文は書かれた。

しかし問題はイスラム法との整合性なのですから、論文執筆者としてMufti Muhammad Abu Bakar氏は適任だったと言えるでしょう。


・投資対象としての仮想通貨は認められていない!


Mufti Muhammad Abu Bakar氏が書いた論文は、「ビットコイン、仮想通貨、ブロックチェーンについてのシャーリア分析(Sharriah Analysis of Bitcoin, Cryptocurrency, and Blockchain)」というタイトルがついています。

ブログバージョンもあります。概観は前回記事に譲ります。

結局、このMufti Muhammad Abu Bakar氏の論文を見た仮想通貨のトレーダー達が「イスラム世界でもついに仮想通貨が認められた。あの何億もの人々が仮想通貨市場に流入して来るんだ!!」と湧きあがったのが4月12日に始まる仮想通貨高騰の原因でした。

しかし論文を読めば分かるのですが、Mufti Muhammad Abu Bakar氏は実は、そんなことは言っていません。

Mufti Muhammad Abu Bakar氏は「投資対象としての仮想通貨は、勧められない、つまりharam(イスラム法違反)だ」としっかり述べているのです。

原文を見てみましょう。

とくにビットコインのような仮想通貨(暗号通貨)の目的は、代替通貨となることだ。だから、仮想通貨を、株式のように投資目的で買うことは勧められない

4. The objective of cryptocurrency- particularly bitcoin -is to serve as an alternative currency […]. Therefore, it is not advisable to buy cryptocurrency for investment purposes, like stocks or shares [….].   (論文 p.21)

コピペできない処理が施されているので手打ちで引用したため、短文お許しください。また「4」とあるのは学術論文によくある「まとめの番号」です。


・なんのために書かれた論文だったか。


Mufti Muhammad Abu Bakar氏が書いた「ビットコイン、仮想通貨、ブロックチェーンについてのシャーリア分析(Sharriah Analysis of Bitcoin, Cryptocurrency, and Blockchain)」という論文は、あくまで「通貨として仮想通貨は容認できる(ハラル=イスラム法に合致する)かどうか、を分析したものです。

そのため「財産」「通貨」という概念がイスラム法(シャーリア)においてどのように使われているのかが考察されています。

重要なのは、そのなか(財産、通貨)に、「証券」という概念は含まれていなかったということです。

そして多くのトレーダーが仮想通貨に対して持っている「投機の対象」という概念を、Mufti Muhammad Abu Bakar氏は思い切り退けているのです。

つまり、投資にせよ投機にせよ、証券としてみなされた仮想通貨は、イスラム法違反でハラム(haram)のわけです。

この点があまりにも多くのひとに見逃されていると思います。

もっとも、このような結論(証券として見られた仮想通貨はイスラム法違反でハラム)は、貧困層に対する企業支援(マイクロファイナンス)といったほぼ慈善活動を転回するブロッソムファイナンスの性格からすれば至極当然だと言えるでしょう。

現在の仮想通貨の高騰が自分の書いた論文が原因だと言われ、Mufti Muhammad Abu Bakar氏は苦虫を嚙み潰したような顔をしているのではないでしょうか。

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それでは、本連載はこれでおしまいです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m