インターネット上の著作権問題。その5(終)

こんばんは、伊田です。

インターネット上の著作権問題について記事を書かせて頂いています。連載第5回目最終回に成ります。

前回までで、著作権問題で問われる刑事上の罪と、民事上訴えられる損害賠償についてお話しさせて頂きました。

最後に扱いたいのは、ブログ作成上避けられないコピペについての3つの考え方、すなわち引用転載報道利用です。


・引用と転載の区別。


インターネット上の著作権問題について検索すると、大概、出て来るのが「引用は可能、転載は禁止」といった説明です。

しかし著作権法において両者(引用転載)の区別は明示されていません。

著作権法第2条が本法の用語の定義に当たるのですが、そこに「引用」と「転載」の定義は書かれていません。

仮に『広辞苑』を引いてみると、次の様な定義が述べられています。

引用 … 「自分の説のよりどころとして他の文章や事例または個人の語を引くこと」

転載 … 「既刊の印刷物の文章・写真などを他の印刷物に移し載せること」

法律上の議論で難しいのは、こういった『広辞苑』の定義を持ち出して来ても、説得力に乏しいということです。

つまり、

転載をした様に見えるけれども、ブログ上だ。『広辞苑』によれば転載は印刷物にのみ適用される。ブログは印刷物ではない。だからオレのやったことは転載ではない!」

といった議論は成立しないわけです。

結局、目下の問題は著作権法という法律上で戦わなければならなくなります。

同様の議論は、著作者側にも言えます。『広辞苑』ではないですが、程度はどうあれ、こんな主張をしている著作者をインターネット上でよく見かけます。

「ワタシのブログは著作物の一種だが、転載だろうが引用だろうが、やってはダメだ、とブログに断り書きをしておいた。なのに、他のヤツが勝手に使った。引用の様に見えるが、そんなのワタシには関係ない!

これは筋が通りません。同じ著作権法という法律上で戦わなければならないのです。


・引用条文。


著作権法で「引用」という言葉は定義されていませんが、それについて述べている有名な条文があります。次の著作権法第32条です。

第三⼗⼆条 公表された著作物は、引⽤して利⽤することができる。この場合において、その引⽤は、公正な慣⾏に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引⽤の⽬的上正当な範囲内で⾏なわれるものでなければならない。

この条文について、文化庁の引用ガイドラインというものがあります。それも見てみましょう。

著作物等の「例外的な無断利用」ができる場合
「引用」(第32条第1項)
他人の主張や資料等を「引用」する場合の例外です。
【条件】
ア 既に公表されている著作物であること
イ 「公正な慣行」に合致すること
ウ 報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
エ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
オ カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
カ 引用を行う「必然性」があること
キ 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

典型的なお役所文書で分かりにくいですが、条件ア~キを満たせば、「引用」として、他人の文章や画像を、無断で利用できる、と言っているのです。

そしてその無断利用の権利は、著作権法第32条1項で保障されている、と文化庁が言っています。

引用について、軽く説明しておきます。

大学生さんなんかだったらレポートなどで、本から一部を抜粋して文章を作り上げますよね。あれが引用です。引用が許されていなければ、学術論文などそもそも成り立たないでしょう。


・転載条文。


著作権法で「転載」という言葉は定義されていませんが、それについて述べている有名な条文があります。それは次の著作権法第39条です。

第三⼗九条 新聞紙⼜は雑誌に掲載して発⾏された政治上、経済上⼜は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、⼜は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを⽬的として⾃動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の⽤に供されている電気通信回線に接続している⾃動公衆送信装置に情報を⼊⼒することによるものを含む。)を⾏うことができる。ただし、これらの利⽤を禁⽌する旨の表⽰がある場合は、この限りでない。

引用転載の違いは、結構明確で、自論展開の中に組み込まれたのが引用、そうではなくてバーンとそれだけが掲載されているのが転載です。

引用は創造性があるけれども、転載は創造性がない、と理解することもできます。

マンガのネタバレサイト、あれは完全な転載ですね。

さて、上記32条の最後の一文ただし、これらの利⽤を禁⽌する旨の表⽰がある場合は、この限りでない。」がクセモノで、これがいわゆる「無断転載を禁ず」というサイトの一番下にある文言に結びついているわけです。

しかしたとえこの文言があっても、引用ならば無断利用可能だと著作権法条文を解釈することもできます。

さて、転載についても文化庁の転載ガイドラインというものがありますから、見てみることにしましょう。

「新聞の論説」等の転載(第39条)
新聞等に掲載・発行された「論説」を、他の新聞等への転載、放送・有線放送する場合の例外です(放送・有線放送の場合は、「受信機を用いた公の伝達」も例外の対象です)。
【条件】
ア 新聞又は雑誌に掲載して発行された論説であること
イ 学術的な性質を有するものでないこと
ウ 政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説であること
エ 「他の新聞・雑誌への転載」「放送」「有線放送」であること
オ 転載・放送・有線放送を禁止する旨の表示がないこと
カ 「出所の明示」が必要

どうでしょうか。私はこちらのガイドラインは、とくに新しく得るものが無いと思っています。上掲の著作権法39条を要約しただけですね。


・報道利用条文。


引用と転載の対立に隠れて目立たないですが、最後に、報道利用について述べた著作権法第41条を見てみたいと思います。

第四⼗⼀条 写真、映画、放送その他の⽅法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、⼜は当該事件の過程において⾒られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の⽬的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利⽤することができる。

ニュースサイトのような報道を主目的とするサイトにおいては、著作物を無断利用する権利が与えられるべきだ、ということがこの条文から理解できます。

多くのウェブ上のニュースサイトは、この条文に従って、著作物を利用しているというのが私の印象です。


・むすび


いかがだったでしょうか。インターネット上の著作権問題について、比較的ながながと論じさせて頂きました。

本連載で述べられていることは絶対正しいとは言えないかも知れません。

一体、インターネット上の著作権問題が常に論争の火種になっているのは、著作権法が、やはり表現の自由と対立する性格を持っており、他方で、著作権法自体に不明確なところがあるからだと言えます。

私達は、ブログを初めとするインターネット上の著作物について、まだ十分な指針を持っていない、というのが実情ではないでしょうか。