(「ジェイコブ・ズマ大統領」出典:WorldEcnomicForum)
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こんばんは、品川です。
2017年、南アフリカランドは先進国の通貨ほどの上昇を見せていません。
2017年も終わりの10月25日、再び下落をし、対円で8円台を割り込みました。
いろいろな原因が囁かれていますが、私は目下の現象はファンダメンタルズというよりもテクニカルなものだと考えています。
ただ、テクニカルと言ってもMACDだとかストキャスティクスとか、ああいったものではなくて単純にクロスレートでの現象です。
本記事では、この点について、私なりの意見を述べさせて頂きたいと思います。
・ドルストレートとクロスレート
「8円台」とZAR/JPYのレートを述べましたが、それはいわゆるクロスレートです。
クロスレートの理解は、言うほど簡単なものではありません。
少なくとも直感として、次の2つが不可欠だと言えます。
1. 「ドル/円」つまり「USD/JPY」に対する直観。
2. 外国での買い物にその国の通貨を使うこと。要は一番リアルな意味での外貨両替。
順を追って見て行きましょう。
1.「ドル/円」つまり「USD/JPY」に対する直観。
「100ドル/円」は、何を意味するでしょうか。
「100円払えば、1ドルが手に入る」。正解です。
当たり前ですが、この直感を大切にしてください。
というのも、似た表現方法でも、これが「0.06 ZAR/USD」なんかに成ると、分からなくなりませんか?
そこで「100ドル/円」から類推する考え方を身につけて欲しいのです。
そうすれば、「0.06 ZAR/USD」の意味は、「0.06 USD払えば、1 ZAR手に入る」ということが、しっかりと言えるはずです。
2. 外国での買い物にその国の通貨を使うこと。要は一番リアルな意味での外貨両替。
「0.06 ZAR/USD」の意味は、「0.06 USD払えば、1 ZAR手に入る」です。
1 ZAR(南アフリカランド)なんて手に入れてどうするのでしょうか?
もちろん、南アフリカで買い物をするためです。
実例の度合いは無視しますが、1 ZARで例えば、アイスを買うだとか、そういうことをするのです。
・ランドの下落の原因は、ドル高である。
(「ZAR/USD月足」画像出典:xe)
では、本題に移りましょう。
ずっと起こっているランドの不調、つまり対円でランドが8円台より上昇して行かない理由は、ドル高が原因だと考えられます。
ここでドル高とは、対円というよりも、対ランドと考えたほうが良いでしょう。
もっと言ってしまえば、基軸通貨としてのドル自体の価値高騰です。
あくまで資料のひとつですが、それは上掲画像を見れば一目瞭然です。
対ランドで、ドルが高騰している、つまりランド安/ドル高であることが・・・分かるでしょうか?
右端でガクンと落ちてますよね。これがをランド安/ドル高表しています。
注意しなければならないのは、この類のグラフで、下がった時「✖/◎」の「◎」の通貨のほうが強くなっている、ということです。
この点についても「円高/ドル安」というとき、ややこしいですが「ドル/円」のグラフがガクンと下がることを思い出せば分かるのではないでしょうか。
FXをやるとき「1.ドル/円の直感が不可欠」と上に言ったのは、こういう意味でもあります。
・2017年の米ドルは最強。
YJFXなどのスワップポイントを見て驚くのは、米ドルのスワップポイントが今や、豪ドルと並んでいるということです。40円/日でした。
最早、市場参加者にドル/円を買わない理由がないくらいに見える勢いです。
さて、この「最強通貨」に戻りつつある米ドルと、日本円はとりあえず勢力均衡しておくとしましょう。つまり、「100 ドル/円」と固定するのです。…①
(以下、数学っぽくてイヤかも知れませんが、①、②、…という言及の仕方をさせてもらいます。もちろん、無視してしまっても構いません。)
何回見ても分かりにくいかも知れませんが、「100 ドル/円」は「100円」という意味です。「100円で1ドル買える」という意味です。「100ドル」という意味ではありません。
・事例解説:レート「0.06 ZAR/USD」
では、上に述べた通り「100 ドル/円」と固定し(①)、対ランドでドルが強含んだことを考えてみましょう。
これを考えることが、クロスレートを理解することに繋がります。
例えば、実例の度合いは一切無視して、「0.06 ZAR/USD」が「0.03 ZAR/USD」に下落した(ドルが強くなった)ことを考えてみます。…②
出だしとして、100円持っているとします。
その100円で、1ドル買えます(①より)。
まだ以前としてレートが、「0.06 ZAR/USD」だったとします。この意味は「0.06 USD払えば、1 ZAR手に入る」です。間違えやすいので注意してください。
このとき、1ドルあれば、単純な比の計算より(※)、100/6(100分の6)ランド=約16.7ランド買えることが分かります。
(※ USD:ZAR = 0.06:1 = 1:x を「内比=外比」で解いてみてください。)
こうして、手持ちの100円が、100/6(100分の6)ランド=約16.7ランドに成りました。…③
この約16.7ランドで、南アフリカで生活することもイメージしてもらいたいと思います。アイスをたくさん買うでも何でも良いです。
・事例解説つづき:レート「0.03 ZAR/USD」に下落
しかし、いろいろ考えた挙句、ケチをして、せっかく両替した約16.7ランド=100/6(100分の6)ランドを使わなかったと想定してください。
南アフリカから帰国の日が来ました。そのお金を握りしめて、日本円に両替しに行きます。
しかし、ふと為替レートを見ると、「100 ドル/円」のまま変わらずですが(上記①)、対ランドでドルが価値を大幅に上げて「0.03 ZAR/USD」に成っていました(上記②)。
さて、手持ちの使わなかった約16.7ランド=100/6(100分の6)ランドは(上記③)、一体、何円に成って返って来るでしょうか。
問題は下落したレート「0.03 ZAR/USD」の意味です。
上に学んだことから「0.03 USD払えば、1 ZAR手に入る」のは何とか分かりますが、このレートから、その逆、つまりランドを払って米ドルを買うパターンは出て来ません。
ここでやはり「ドル/円」の直感が活きて来ます。
「100ドル/円」のとき、100円払えば1ドル手に入りますが、では、何ドル払えば1円手に入るのでしょうか。
答えは、逆数(※)、1/100(100分の1)ドル=1セントです。これだけ払えば、1円手に入ります。当たり前と言えば当たり前ですよね。でもこれは、「ドル/円」の直感の賜物です。
(※分数の分母と分子を引っくり返した数をが逆数と言います。分数=分子/分母と表せば、2/3の逆数は、3/2です。)
この逆数の考え方を、先の「0.03 ZAR/USD」のレートに当てはめましょう。
このレートから、1ドル買うためには、0.03 = 3/100 の逆数、つまり 100/3 = (100分の3)ランド=約33.3ランド払わなければならないことが分かります。
さて、南アフリカから帰国しようとする自分の手には、使わなかった約16.7ランド=100/6(100分の6)ランドがあります(上記③)。それで何ドル買えるでしょうか?
対ランドでドルが価値を上げてしまったために、残念ながら、1ドル買うために100/3ランド必要な場合、100/6ランドでは、0.5ドルしか買えません(※)。
(※手持ちの100/6ランドの中に、100/3ランドがいくつあるか考えて下さい。1/2=0.5ですよね。)
こうして、何にもしていないのに0.5ドル、そしてその手持ちにお金に対する固定レート「100 ドル/円」での両替を経て(上記①)、帰国するときには、50円が返って来ることに成ります。
行くときは、100円持っていたのですが・・・。
・まとめ
難しい話をしてしまいました。ごめんなさい。
要するに言いたかったことは、「日本円は、ドルに対しても、ランドに対しても、何も変化していなかったとしても、基軸通貨のドルが強くなる(価値が高騰する)と、ランド/円で損をしてしまう」ということです。
どうでしょうか。円安/ドル高で好景気の様相を呈しているのに、ランド/円が上昇しないという経験はないでしょうか。
上に述べたことがその原因だと言えます。つまり、ドル高の猛威がランドを直撃しているのです。
私はこのことが2017年時点において、ランド/円でなかなか上昇が見られなかったことの原因だと考えています。
また上に述べたことにクロスレート(クロス円)の仕組みというか魔法というか、そんなものも含まれていたのに気づいていただけると幸いです。
結論から言えば、米ドルを見守ってください。トランプの失言、北朝鮮有事、イスラム国有事、NY株式市場の動向・・・。
よく言われるように、南アフリカのズマ大統領の汚職が2017年のランド不調の原因だとも考えられます。しかし、根っこはやはり、アメリカでしょう。
アメリカの危機に比べれば、南アフリカの危機など、やはりレートを動かすには小さいものだと、そう思われるのです。
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