インターネット上の著作権問題。その4

こんばんは、伊田です。

 

インターネット上の著作権問題について記事を書かせて頂いています。連載第4回目に成ります。

 

前回作権侵害で問われる民事上の責任についてお話しさせて頂きましたので今回は刑事上の責任つまり著作権侵害がどのような犯罪に成るかについて考えてみたいと思います。

 


・刑事事件あるいは犯罪としての著作権侵害。


 

著作権侵害が刑事事件として扱われると、どうなるのでしょうか。

 

著作権法では、第8章(著作権法第119条から第124条)、その名も「罰則」が、この点について述べている箇所です。

 

こちらの刑事事件、要は犯罪としての側面については、判例を追うのではなく、条文を辿った方が良いでしょう。

 

以下に、順を追って見て行きたいと思います。

 

 


・どんな罰せられ方をするの?


著作権侵害を犯罪として犯したとき、どんな罰が待っているのでしょうか。

 

それを述べているのが、著作権法第109条です。

 

第百⼗九条 著作権、出版権⼜は著作隣接権を侵害した者第三⼗条第⼀項第百⼆条第⼀項において準⽤する場合を含む。第三項において同じ。に定める私的使⽤の⽬的をもつて⾃ら著作物若しくは実演等の複製を⾏つた者、第百⼗三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百⼆⼗条の⼆第三号において同じ。を侵害する⾏為とみなされる⾏為を⾏つた者、第百⼗三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する⾏為とみなされる⾏為を⾏つた者⼜は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。は、⼗年以下の懲役若しくは千万円以下の罰⾦に処し、⼜はこれを併科する。

 

正直、法実務家の悪癖が凝縮したような文章ですよね。

 

こんなカッコの付け方みたことないです。取り除いてみましょう。Excelみたいな感じで、一番外側の赤カッコを外します。

 

第百⼗九条 著作権、出版権⼜は著作隣接権を侵害した者は、⼗年以下の懲役若しくは千万円以下の罰⾦に処し、⼜はこれを併科する。

 

ぜえぜえ・・・。ようやく日本語が出て来ました。

 

さて、この第109条の規定が、犯罪としての著作権侵害としての最も一般的な文言に成ります。

 

それによると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、あるいは両方とも(併科)が、犯罪としての著作権侵害に与えられる処罰の中身に成ります。

 

非常に重いですが「以下」の文言を読み落とししないようにするべきでしょう。

 

 


・いま話題の動画サイト条項。


刑事罰を最も一般的な仕方で述べている著作権法第109条には、第2項もあります。

 

しかしこれは、目下の私達の問題、つまりコピペの著作権問題には関係がないと切って捨てたほうが良いでしょう。そこには、著作者の人格を侵害する、といったことについての取り決めが書いてあるだけです。ただ、他条文への文言丸投げが連発されていて、非常に読む者を混乱させます。

 

それはさておき、著作権法第109条第3項には、興味深い取り決めが記されています。

 

いま流行りのDailymotionやYouTubeでのドラマやアニメの閲覧、それを牽制(けんせい)する罰則規定なのです。

 

第三⼗条第⼀項に定める私的使⽤の⽬的をもつて、有償著作物等録⾳され、⼜は録画された著作物⼜は実演等著作権⼜は著作隣接権の⽬的となつているものに限る。であつて、有償で公衆に提供され、⼜は提⽰されているものその提供⼜は提⽰が著作権⼜は著作隣接権を侵害しないものに限る。をいう。の著作権⼜は著作隣接権を侵害する⾃動公衆送信国外で⾏われる⾃動公衆送信であつて、国内で⾏われたとしたならば著作権⼜は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。を受信して⾏うデジタル⽅式の録⾳⼜は録画
を、⾃らその事実を知りながら⾏つて著作権⼜は著作隣接権を侵害した者は、⼆年以下の懲役若しくは⼆百万円以下の罰⾦に処し、⼜はこれを併科する。

 

素晴らしい文章ですね(怒)!

 

贅肉(ぜいにく)を削ぎ(そぎ)落して、日本語を取り出しましょう。

 

3 私的使⽤の⽬的をもつて、有償著作物等の著作権⼜は著作隣接権を侵害する⾃動公衆送信を受信して⾏うデジタル⽅式の録⾳⼜は録画を、⾃らその事実を知りながら⾏つて著作権⼜は著作隣接権を侵害した者は、⼆年以下の懲役若しくは⼆百万円以下の罰⾦に処し、⼜はこれを併科する。

 

はあはあ・・・。すごい世界ですね、法曹界は本当に。

 

要するにこの第109条第3項によれば、DailymotionやYouTubeで勝手にアップされたドラマやアニメを視聴した場合、いわゆる不正視聴として、2年以下の懲役200万円以下の罰金、あるいは両方の処罰を与えられてしまうのです。

 

・・・悪いですが、ザル法と化していないでしょうか・・・?

 

でも、こういった法律があることを、私達は十分、肝に銘じるべきでしょう。

 

 


・親告罪条文。


犯罪としての著作権侵害についての取り決めを述べている著作権法第8章「罰則」ですが、第109条を除けば、あとはマイナー条文といった感じです。

 

ただ、あとひとつだけ注目に値する条文がもうひとつあって、それが著作権法第123条です。

 

第百⼆⼗三条 第百⼗九条、第百⼆⼗条の⼆第三号及び第四号、第百⼆⼗⼀条の⼆並びに前条第⼀項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

・・・どれが主語か分かんないよ(怒)。

 

私達の問題の範囲内で、上記条文の余分なところを削り取ると、次の様に成ります。

 

第百⼆⼗三条 第百⼗九条のの罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

私達は上に、著作権法第109条が、犯罪としての著作権侵害の罪に対する罰則規定の一番一般的なものである、ということを知りました。

 

その罰則を適用する、つまり処罰するためには、権利を侵害された著作者が、告訴をしなければならないと、この第123条は言っているわけです。

 

普通、私達が知っている犯罪とはそういうものではないですよね。殺人事件が起こったら、警察が直ぐに動いてくれます。

 

殺人などとは違った、こういった被害者が告訴しなければ始まらない犯罪を、親告罪と言います。

 

だから逆に言えば、殺人非親告罪です。

 

親告罪としての犯罪は、非常に民事事件に似ていることが、ここまでの話から分かるでしょう。

 

著作権侵害は、そういった類の「犯罪」なのです。

 

 


・どんな事例があるか。


犯罪としての著作権侵害を知るには、以上のように著作権法の条文を辿った方がイメージが湧くと思います。

 

だから、具体的な事例については、サラっと触れて終わることにしましょう。

 

犯罪としての著作権侵害の事例は、そのほとんどが、音楽のMP3販売だとか、プログラムの配布だとかいった事例です。

 

ただ、最近とくに多く、注目に値するのがマンガのネタバレです。

 

週刊ジャンプなどを発売日に人より早く買って、自分のサイトにアップロード=ネタバレさせて、膨大なサイト訪問者を獲得する、というあの手口ですね。

 

私達が今問題にしているコピペに一番近いのが、このマンガのネタバレでしょう。

 

だから、ブログでのコピペ犯罪としての著作権侵害として捉える時には、このマンガのネタバレに似た行為をしていないかどうか、自分でチェックしてみるのが一番良いと思います。

 

翻って言ってしまえば、ブログでのコピペが、刑事事件として注意されるのは主にその側面(マンガのネタバレサイトみたいになっていないかどうか)ということだけです。

 

ブログでのコピペが抱える多くの問題は、刑事事件としてよりも民事事件としての性格の方が強い、というのがここまで書いて感じた印象です。

 

では、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

本編は続きます。

 

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