∠角度をつけて北朝鮮。その1

 

こんばんは、編集長です。2017年、北朝鮮情勢は悪化の一途を辿っています。私達は今、何を、どのくらい把握しなければならないのでしょうか。行き交うニュースの中で、必要と思われる情報をピックアップしつつ、直ぐ隣国の危機を眺めてみましょう。それが本連載の狙いです。

 

ただ、ちょっと∠角度がついています。

 

好き嫌いが出るかも知れません。ご勘弁ください。

 

・・・連載第1回目です。

 

 


・ヨーロッパの火薬庫。


 

朝鮮半島を、第一次世界大戦時のバルカン半島=「ヨーロッパの火薬庫」に準えた(なぞらえた)のは、確か、落合信彦氏だったと思います。

 

奥菜秀次氏の一連の著作で「やっぱり・・・」という感じの落合氏ですが、この準え方においては慧眼だったと言えます。(ただ本当に落合氏本人が言っていたならば、の話ですが。)

 

そこでまず、遠いところから話が始まって申し訳ないですが、朝鮮問題を、第一次世界大戦のバルカン半島に重ね合わせて考えてみましょう。

 

 


・バルカン半島。


(バルカン半島:図中央)

 

2017年の北朝鮮ならびに朝鮮半島情勢は、第一次世界大戦前夜のバルカン半島に酷似しています。

 

歴史の勉強に成ってしまいますが、すこし第一次世界大戦前夜、要は「ヨーロッパの火薬庫」を眺めてみましょう。

 

上掲画像が、バルカン半島です。具体的には上掲画像に現れている、ギリシア、アルバニア、ブルガリア、マケドニア、セルビア、モンテネグロ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ(1995年デイトン合意により誕生)、コソボ、トルコ(ポスポラス海峡をヨーロッパ側に渡ったイスタンブールの地帯)・・・が、バルカン半島の構成国です。

 

馴染みの無い地域に見えますが、新興国として注目を集めている所もあります。

 

さて、このバルカン半島諸国の中で最後に出て来たトルコは、嘗てオスマントルコ(1299-1922)という大帝国を誇っていました。手っ取り早く言ってしまえば、バルカン半島のほとんどが、このオスマントルコの支配下にありました。

 

オスマントルコトルコ人の帝国です。トルコ人とは、ペルシア人=イラン人と同じく、イスラム教を作り出したアラブ人に見出されて、イスラム教文化圏を形成した民族です。

 

それを面白く思わなかったのが、バルカン半島のスラブ人でした。スラブ人は、ギリシア正教会というキリスト教文化圏の民族です。それが、イスラム教文化圏の支配下にあったのですから、たまったものじゃありませんでした。

 

こうして、スラブ人による、スラブ人のための独立運動が起こりました。いわゆるパン=スラブ主義(Pan-Slavism)です。

 

スラブ民族統一独立運動」と理解すれば良いでしょう。「パン(Pan)」は「全統一」という意味の接頭語です。「」という当て字もされます。

 

 


・三国同盟 vs 三国協商


(画像出典:山川出版社)

 

 

このパン=スラブ主義(スラブ民族統一独立運動)のとばっちりを受けたのが、神聖ローマ帝国の流れをくむゲルマン人(フランク人)系のオーストリアでした。

 

オーストリアは当時、オーストリア=ハンガリー帝国という、それなりの領土を誇る国家を形成していました。しかしここには運悪く、スラブ人がたくさん居たのです。

 

こうして、オスマントルコ帝国からの独立を目指すスラブ人の運動は、パン=スラブ主義という普遍的な運動として、オーストリア=ハンガリー帝国からの独立を目指すスラブ人の運動へと姿を変えて行きました。つまり、バルカン半島を北上しつつ、飛び火して行ったのです。

 

こともあろうに、それを悪用しようとしたのがロシアでした。同じギリシア正教会の文化圏に属する民族として、ロシアはスラブ人の運動を、自己の領土拡大の好機とみなしたのです。

 

時同じくして、世界は、英仏露の三国協商と、独伊墺の三国同盟とに二極化していました(上掲画像)。

 

こうして、スラブ人の独立運動(パン=スラブ主義)の中心となったバルカン半島は「ヨーロッパの火薬庫」として、世界大戦の導火線と成って行ったのです。

 

 


・ロシアの立ち位置。


(画像出典:Kremlin.ru

 

 

以上の話で浮かび上がって来るのは、やはりロシアの果たす役割です。

 

朝鮮半島は「第一世界大戦前夜のバルカン半島」に準(なぞら)えることができます。

 

そして、第一次世界大戦前夜バルカン半島が「火薬庫」と成ったのは、裏でロシアが糸を引いていたから、と言うことができます。私達が歴史をなぞって見た通りです。

 

では、2017年の朝鮮半島はどうでしょうか。北朝鮮の背後には、社会主義同盟の中国が居ます。そしてその更に後ろには、嘗ての社会主義大国ロシアが居るのです。

 

ドナルドトランプがアメリカの大統領選で勝ったのは、ロシアのサイバーアタックがあったからだと言われています。アメリカのメディアはまだ、このウワサの裏付けに奔走しています。

 

そしてそのトランプ「大統領」は、ロシアの思惑通りに(?)、北朝鮮とケンカを始めてしまいました。

 

2017年の北朝鮮危機は、第一次世界大戦前夜と同じようにロシアが裏で糸を引いている・・・。

 

大きな黒幕のようにして存在するロシア・・・。

 

そんな共通の構図が、北朝鮮危機第一次世界大戦前夜の比較から浮かび上がって来るように思われます。

 

どうでしょうか。

 

ご納得行く方も、行かない方も居られると思います。

 

ただ、とりあえず第1回目はここまでとしたいと思います。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

つづきます。

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