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品川です。今と成っては<印象>しか残らなくなってしまったライブドア事件(2004年)をまとめています。
逮捕された堀江貴文氏(2013年11月10日に刑期
その罪状「偽計取引」つまり一般には「インサイダー取引」として知られる罪に焦点を合せ、お話をさせて頂いてます。
前回、堀江氏のスキーム(インサイダー取引の必勝パターン)の前半:
①株式分割の公表
→ ②株価の一時的上昇
→ ③投資事業組合による株売却
→ ④株売却の収益(売却益)
…を見ました。
今回は、この「③投資事業組合による(ライブドアの)株売却」からお話を再開させて頂きたいと思います。
とりあえず、説明の概観にもなる堀江氏のスキームをもう一度、初めに掲載しておきます。
(「ライブドア事件のスキーム」画像出典:-)
この画像自体は、今は削除されてしまった産経新聞か日経新聞の記事の一部です。
・なぜ投資事業組合に自社株を売らせたのか?
(上掲「ライブドア事件のスキーム」右下拡大)
堀江氏のスキームでは、「③投資事業組合による(ライブドアの)株売却」というステップがあります。上の図のとおりです。
ここで疑問が沸き起こります。なぜ、堀江氏は自社株をわざわざ「投資事業組合」などという変な組織から売却していたのでしょうか。
答えは、そんなに難しくないと思います。インサイダー取引であることを隠すためです。
自社であるライブドアから直接売ったのでは、直ぐに検察に目を付けられてしまう。そこで、外見上自分の会社とは異なる組織に「他社の株」としてライブドア株(自社株)を売らせれば良い。
それだけではない、このダミー会社(投資事業組合)を利用すれば、いくらでも自社(ライブドア)のインサイダー的行動の目をくらませることができる。
これが、堀江氏のスキームの内幕だったわけです。
・自社株買いのスキーム。
(上掲「ライブドア事件のスキーム」下部左拡大)
冒頭にまとめましたが、
①株式分割の公表
→ ②株価の一時的上昇
→ ③投資事業組合による株売却
→ ④株売却の収益(売却益)
このプロセスを続けるには、売るためのタマ=自社株が無限に必要です。
しかしインサイダー取引に対する検閲の目が光っている限り、自社株を堂々と大量発行した後自社株買い、なんて見え透いたことはできません。
そこで、堀江氏が考え出したのは、「他社の買収」という手段でした。
上記の図に並ぶ、ロイヤル信販、キューズネット、クロサワコミュニケーションズ…といった「どうでもいい会社」がそれです。
それら「どうでもいい会社」を買収する際、堀江氏が取った手段が株式交換なのです。
株式交換とは、買い手企業(この場合ライブドア)が、買収の対価として新株を発行し、売り手企業(どうでもいい会社)の株式と交換することです。
売り手企業(どうでもいい会社)の株式を大量に手に入れることで経営権を手に入れられます。これは株式を介した乗っ取りの典型です。
しかし、買い取った先の企業はいまだに独立性を保っています。ライブドアにとってこれが都合が良いことは、狙いがインサイダーであることを考えれば明らかでしょう。
他方、株式交換での買収なので、ライブドア側は現金を払う必要がありません。
しかも新株を幾らでも発行できる!
そしてその幾らでも発行できる新株こそ、子分に成った「どうでもいい会社」から自分の会社に還流させていた当のモノ、よだれを流して欲しがっていた売るためのタマ=自社株なのです。
こうして、堀江氏は、無限に自社株を手に入れるスキームを確立したのでした。
・話の終わりに。
こうして、堀江氏は或る種の錬金術を確立したのでした。それは、入り組んだインサイダー取引のスキームでした。もう一度、それを眺めてみましょう。
1.株式分割に始まる自社株売りのスキーム
①株式分割の公表
→ ②株価の一時的上昇
→ ③投資事業組合による株売却
→ ④株売却の収益(売却益)
「株式分割」はライブドアの取締役会で勝手に決めていいことなので、いつでもオーケーです。
ただ、このスキームを機能させるためには、売るためのタマ=自社株が無限に必要でした。そこで、次の自社株買いのスキームが出て来ます。
2.株式交換による買収と自社株還流のスキーム。
どうでもいい会社を買収し、株式交換で相手を活かしつつ経営権だけのっとり操り人形にした挙句、株式交換のために自社株を無限に発行します。
そして操り人形と成ったどうでもいい会社から、株を還流させます。還流先は、もちろんライブドアなんてことはせず、犯罪の起点と成った投資事業組合です。
・むすび
どうでしょうか。これが堀江貴文という人物が行っていた犯罪の全容です。
賢いですよね。ずる賢いとは、こういうことを言うのでしょう。しかし、社会には必要無いずる賢さです。
本記事が、ホリエモン賛歌にうかれている浅はかな世代に、少しでも訴えるものであることを祈ります。
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