ライブドアと堀江貴文氏 その1

品川です。村上ファンドの村上世彰氏の『生涯投資家』がヒットしていますが、村上ファンド事件(2006年)とほぼ同じ時期に日本を騒がせていた事件として堀江貴文氏のライブドア事件(2004年)があります。

 

私自身、この事件を何度か調べて、すぐ忘れてしまったのですが、最近また必要に迫られてネット上などを調べるにつけ(必要書類は興味が無かったので捨ててしまいました)、特に若い世代がホリエモン賛歌をうたっていることに愕然としました。

 

犯罪者に「氏」をつける必要があるのかどうか分かりませんが、既に刑期満了をしていますし()、覚せい剤所持で逮捕された清原和博氏も「氏」づけで呼ばれているので、堀江貴文氏で行きましょう。いま、私達が忘れてはならないのは、堀江貴文氏は犯罪者だということではないでしょうか。野口英昭氏が故人に成ってしまうという事件まで起きたのです。

(※堀江貴文氏は、2013年3月27日に仮釈放となり、その後2013年11月10日に刑期満了しています。)

 

最近、恐らくは出版業者の思惑からでしょう(ホリエモン本は売れるので)、堀江氏が犯罪者だったことすら忘れ去られて行っている風潮がある様に見えます。なので、ここに備忘録的に書き記したいと思い本記事を書くことにしました。

 


・一枚の絵。


(「ライブドア事件のスキーム」画像出典:-)

 

私が本記事で理解し説明したいのは、単純に上の図です。出典は恐らく、産経新聞か日経新聞だったと思います。ネット上で拾ったのですが、現在は見つかりませんでした。

 

この図になぜこだわるのかと言うと、そこにライブドア事件の核心というか、堀江氏の犯した犯罪のスキームがよくまとめられているからです。

 

世間一般には、①粉飾決算②偽計取引と風説流布の2つが堀江氏の容疑だと言われています。上記スキームに凝縮されているのは、の「偽計取引」の所です。

 

「偽計取引」と言われてもピンと来ないかも知れませんが、橘玲(たちばなあきら)氏が解説している通り(※)、堀江氏が偽計取引で描いたスキームとは、インサイダー取引の一種だと言われています。

(※橘玲氏の『臆病者のための株入門』44頁以降の説明が分かり易かったです。以下、本記事は、氏の説明を更に噛み砕いたものだとも言えます。)

 


・インサイダー取引とは?


(「ライブドア事件のスキーム」画像出典:同上)

 

或る会社の社員が、自分の会社の株を買うことは禁止されていません。トヨタの社員がトヨタの株を買うことは許されています。しかし、自分の会社の、例えば決算情報など、株価の変動に影響を与える情報を、公表前に知りその情報をもとに株を買ったり売ったりしたなら、これは犯罪に成ります。この犯罪がインサイダー取引です。

 

説明を聞いて分かる通り、インサイダー取引は「どうやったらバレるの?」といったレベルの犯罪です。脱税に非常に似ています。多くの場合、愛人からあるいは同僚からのタレコミで逮捕に繋がると言われる所以です。

 

ただ、検察も指をくわえて見ているだけではなく、取締役など大株主が株を自社株売買した場合には、報告するよう厳格な取り決めがあります。これにより、インサイダー的な動向は予知できます。最近も或るアメリカの上場会社の役員が株を大量に売買したので、その会社の決算はダメなのではないかという噂が広まりました。もしこの噂が噂のとおりならば、その役員はインサイダー取引をしたことに成りますよね。

 

さて、堀江氏が犯したインサイダー取引は、上記スキームに4つの形で表れています。項を改め解説して行きましょう。

 


・株式分割。


(「ライブドア事件のスキーム」画像出典:同上)

 

まず、堀江氏のスキーム(インサイダー取引の必勝パターン)の右下を見てみましょう。私の書き込みがあって申し訳ないです。ここで描かれているのは、次の様な事です。

 

①株式分割の公表

→ ②株価の一時的上昇

→ ③投資事業組合による株売却

→ ④株売却の収益(売却益)

 

上の図に書いてあるのは「③投資事業組合による(ライブドアの)株売却」と「④株売却の収益(売却益)」のみです。

 

堀江氏のスキーム(インサイダー取引の必勝パターン)は、①株式分割の公表から始まります。なぜ、その公表をすると②株価が上昇するのでしょうか。これは、一時的に、株式市場に出回る株の総数が減少するからだと言われています。実際、そういう取引上のルールがあるからです。ルール制定者からすれば、株式総数が変化する際の事態の混乱を避けるためのルールだったのでしょうが、堀江氏はその内「株価の一時的上昇」という所にのみ目を付けたのです。

 

「 <一時的>上昇でしょ?黙っていれば値下がりするんじゃないの?」とここで言う人も居るかも知れません。たしかにおっしゃる通りです。しかし、市場参加者のうち、「②一時的上昇」の現象を目ざとく見て取ったのが堀江氏だけだったら、どうなるでしょうか。入り組んだ株式売買のうち、この現象が、たとえば微々たるもので、ほとんどの市場参加者が気づかない程度のモノだったらどうなるでしょうか。売り手を複数見つけて、大量に自社株を売れば、こっそりと堀江氏の会社だけが儲かることが可能なのです。

 

つづきます。

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