ズマ大統領の早期退任はあるか?その1

(「ジェイコブ・ズマ大統領」出典:WorldEcnomicForum)

 

こんにちは、品川です。2017年12月18日のアフリカ民族会議(African National Congress=ANC)党首選で、ジェイコブ・ズマ大統領の元妻ドラミニ・ズマ(Dlamini-Zuma)氏を破り、シリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)氏が見事、ANC新党首に選ばれました。

 

これで少なくとも、ジェイコブ・ズマ(Jacoc Zuma)氏の悪政の遺伝子は絶たれた、と言って良いでしょう。2019年5月のジェイコブ・ズマ大統領任期切れ後、ラマポーザ氏が大統領に成ることによって南アフリカの政治と経済が回復する・・・そんなストーリーが見えて来たのです。

 

せっかちなことですが、南アフリカの情勢は、このラマポーザ氏選出から更に急展開を見せています。最早2019年を待てないということで、ズマ大統領の早期退任を求める声が強く成って来ているのです。

 

Dignified exit(名誉ある退任)」という言葉が南アフリカのメディアで踊る所以です。

 

そんななか、2017年の12月29日、南アフリカの憲法裁判所(Constitutional Court=ConCourt)は、ンカンドラ(Nkandla)におけるズマ氏邸宅への公費(税金)横領の件で、議会はズマ大統領の弾劾(要するにクビ)の手続きを始めるべきか否かについて、興味深い判決を下しました。

 

本連載では、この判決を扱うことで、ランドの今後をファンダメンタルズの観点から考えてみたいと思います。連載第1回目です。

 

 


・12月29日の憲法裁判所の判決。


2017年12月29日、南アフリカの憲法裁判所(Constitutional Court=ConCourt)は、ンカンドラ(Nkandla)におけるズマ氏邸宅への公費(税金)横領の件で、興味深い判決を下しました。

 

ただ、この判決についてはいろいろなメディアでよく分からない解説が横行していて、何が起こったのかイマイチはっきりしていません。

 

直近で、12月29日にランド/円は下落しているため、市場では失望が広がったタイプのニュースであるように見えますが・・・。

 

2つ矛盾対立する記事を見てみましょう。ロイターの速報と、東京新聞の記事です。

 

 


・矛盾する2つの解説。


ロイターの「(外為)マーケットアイ」という速報記事では今回の憲法裁判所の判決について、こんな風に伝えています。

 

憲法裁判所は29日、ズマ大統領が自宅改修に公金を流用したとされる問題で、議会は責任を問えないとの判断を示したが、相場への影響は限定的。

(12月30日 00:35「南アランドしっかり、年初来で13%上昇」)

 

この記事はロイターのサイトなどにどかんと載るようなものではなく、FX系の速報ニュースとして短文で載ったものです。でも確かに、この解説のとおりならランド/円が下落したことの説明にも成ります。

 

ただ、東京新聞はこれとまったく正反対の解説記事を書いています。

 

【ナイロビ共同】南アフリカの憲法裁は29日、ズマ大統領が故郷の私邸改修に多額の公金を使った問題で、下院が同氏の責任を問うのを怠ったと批判、免職に向け弾劾などの手続きを取るよう勧告した。地元メディアが報じた。下院が勧告に従うか不透明だが、ズマ氏の求心力低下は避けられない情勢となっている。憲法裁は勧告で「議会は大統領の責任を追及していない」と指摘した。 憲法裁は昨年3月、ズマ氏が公金の返還に応じないのは「憲法を順守していない」と判断。野党が下院に弾劾決議案を提出したが、下院は同4月に否決した。

(2017年12月29日 21時54分「南ア大統領免職に向け弾劾勧告 私邸改修に公金、憲法裁」)

 

ロイターの速報と言ってることがまったく違いますね。

 

 


・ヘラルド誌の解説を読む。


もし東京新聞の解説する通りなら、ズマ大統領解任の可能性が高まったということで、ランド/円は一層、値上がりするはずなんですけれどね・・・。

 

ロイターの速報と東京新聞、結局、どちらが正しいのでしょうか。

 

南アフリカのヘラルド新聞(The Herald)の解説を読んでみましょう。タイトルは「本当にこれでズマは退任するの?(Dignified exit for Zuma?)」です。

 

憲法裁判所の裁判官の1人であるChris Jaftaは「議会は、ンカンドラの件でズマ大統領の責任追及を果たしていない。最早、大統領退任のメカニズムを用意しなけれければならない段だ」と今回の判決を述べている。

“We conclude that the assembly did not hold the president to account . . . The assembly must put in place a mechanism that could be used for the removal of the president from office,” Judge Chris Jafta said, handing down the judgment.

彼(Chris Jafta)は続ける。「憲法89条の含意するところによれば、議会は大統領罷免のルールを作る義務がある。議会は、180日(6か月)以内に、その義務を果たさなければならない。」

“Properly interpreted, Section 89 implicitly imposes an obligation on the assembly to make rules specially tailored for the removal of the president from office. By omitting to include such rules, the assembly has failed to fulfil this obligation.”

The court ruled that parliament, where the ANC holds a commanding majority, needed to act within 180 days.

 

込み入って難しい文章ですが、ようするに東京新聞の言っていることが正しい、ということです。

 

ちなみに、今回の憲法裁判を起こしたのは、「経済的解放の闘士(EFF:Economic Freedom Fighter)」を代表とする南アフリカ議会の野党で、判決後、彼らは勝利のおたけびを上げたとのことです。

 

 


・じゃあ、何でランドは下がったの?


今回の憲法裁判所の判決はランドの追い風に成ったはずです。

 

しかし、12月29日以後、ランドは下落しました。

 

どうしてでしょうか?

 

続けて本ニュースを追ってみたいと思います。

 

今回は、ここまでです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

本編は、つづきます。

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