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こんにちは、編集長です。2017年、北朝鮮情勢は悪化の一途を辿っています。この前、アメリカの放送局CNNを見たのですが、期待していた日本の衆議院選挙については3分くらいしかニュースが割かれていませんでした。
どうやら国際情勢でいま問題に成っているのは、アメリカのトランプ大統領の発言と、北朝鮮のミサイル発射実験のようです。それに加え、ラッカ陥落で終盤に至ったともいえるイスラム国の問題も目が離せません。
後手後手に成ってしまっていますが、なんとか北朝鮮情勢を把握してみたいと思い、連載させて頂いています。
連載第4回目です。
・北朝鮮のミサイルはアメリカをも射程圏内に入れている。
(防衛省「H27防衛白書」より)
現在の北朝鮮の弾道ミサイルの性能によれば、日本はノドンで十分。アメリカ西海岸ならテポドン2で射程圏内ということに成ります。(BBCによればアメリカ全土も射程圏内の様です)
たとえワシントンDCが狙えなくても、テポドン2でハワイを攻撃できる可能性さえ示せれば、十分アメリカ自身にとっての直接的な脅威に成ります。
・弾道ミサイルは、もちろん核兵器のため。
(「リトルボーイ」出典:Wikipedia)
ちなみに北朝鮮が発射実験をしている「弾道ミサイル(ballistic missile)」ですが、これは「弾丸の軌道のように進むミサイル」という意味で、詳細は割愛しますが、要は「遠くに飛ぶミサイル」です。
どのくらい遠くに飛ぶかと言えば、上掲の「H27防衛白書」に記されたくらいです。
もちろん、北朝鮮はゴルフの練習の様に、ただ弾道ミサイルを打ち上げているのではありません。
狙いは、「この射程圏内で核攻撃できるよ」とメッセージを送ることにあります。
初期の核爆弾は、上掲画像「リトルボーイ」のように大柄で、爆撃機から直接落下させるものでした。日本に投下された原子爆弾は、まさにそのタイプです。
しかし(皮肉なことに)ロケットの開発と並行して、弾道ミサイルが開発され、更にそこに原子爆弾の小型化(アメリカのMark57など)が重なったことにより、原爆は遠くにまで飛ばせるように成りました。
日本に原爆が投下された1945年のわずか15年後、1960年代のことと言われています。
こうして「核弾頭(nuclear warhead)」という言葉が生まれました。各国は弾道ミサイルの射程を誇示できれば、同時にその範囲内の国々に核攻撃の脅威を与えられるようになったのです。
こうして現在の北朝鮮による「威嚇」が可能に成ってしまったのです。
皮肉なことに、それは冷戦時代にソ連とアメリカがやり合っていたことに他なりません。
1962年のキューバ危機など、まさにその典型でした。
・なぜ、北朝鮮は核攻撃の脅威を示さなければならないのか。
(画像出典:朝鮮中央通信)
しかしながらここで、やはり話は前回の疑問に戻ります。
なぜ北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験により周辺諸国に核攻撃の脅威を示さなければならないのでしょうか。
金正恩主席の北朝鮮サイドは自国の「人民の尊厳と名誉」などという抽象的な理由を示すだけで腹の内は見えて来ません(金正恩国家主席の2017年9月21日の声明参照)。
それについて、前回アエラ紙の冴えない解説を取り上げましたが、そこで言われていた「平和協定願望」は置くにしても、他にどんな理由が考えられるでしょうか。
上掲の「H27防衛白書」によれば少なくとも3つ理由があげられています。
理由1.軍事能力強化のため
・・・そのままですね。原子爆弾を持っていれば、誰も攻め込みたがらないですもんね。
しかし、イランの様な中東の諸国がそれを言うならまだしも、地政学的に見て、北朝鮮が国防を強化する理由なんてあるのでしょうか。
北は「盟友」中国ですし、南の韓国「から」攻めてくることは無いと思います。日本は平和主義者です。
こう考えると核武装する理由が見つからないのです。それこそ、平和な町で凶器を持ってうろついている不審者のように成ってしまうだけではないでしょうか。
理由2.政治外交的な理由から。
戦争を踏まえての外交なら核兵器をバックにしていることは有効でしょうが、それ以外の政治外交的な理由で核兵器を誇示する理由はあるのでしょうか。
経済制裁をされないように核兵器を持つという理屈も、分かりそうで分かりません。
理由3.外貨獲得のため。
あり得ますが副次的な理由でしょう。パス。
・・・ここまでが防衛白書のあげる北朝鮮のミサイル発射実験を巡る理由です。もっとも、国防機密も含むでしょうから、真の分析結果をましてやインターネット上に公開することなんかないでしょう。
そういう事情もあってか、なかなか納得する理由がみつかりません。
最後に、私が思う理由をあげさせてください。
理由4.本気で怯えている。
私は、結局これ(本気で怯えている)ではないか、と勘繰ってしまいます。
一般人にはなんとなくとしかイメージできませんが、一国のトップとも成れば危機意識が尋常でないと言うことができるのではないでしょうか。
北朝鮮について、頻繁に報道される粛清劇もその一端でしょう。
ここで参考として、上掲のYouTube動画を見て下さい。
それは、旧ユーゴスラビア(1923-2003)の指導者チトー(1892-1980)が冷戦時代に地下に造らせた原爆シェルター(bunker)についての小さなニュース動画です。
チトーは、独自の社会主義路線を進んだことにより、反社会主義勢力のアメリカのみならず、旧ソ連からも狙われる身と成りました。
その板挟みの窮地が彼をして造らせたのが、上掲YouTube動画の原爆シェルターなのです。
一国のトップが考えることは計り知れません。正気でも狂気でも、です。権力が集中していればいるほど、そうでしょう。
2017年の北朝鮮の「ご乱心」は、このような一国のトップの恐怖心が生み出した結果なのではないでしょうか。
・むすび。
これで「∠角度をつけて北朝鮮」と題された連載は、むすびとしたいと思います。
当初「金正男(キム ジョンナム)氏の視点から描いた北朝鮮」を予定していましたが、予想外にミサイルの話が長引いてしまいました。
また稿を改めて論じさせていただければ、と思います。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
(北朝鮮危機が杞憂であることを祈りつつ。)
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