今回(2018/5/26)のS&P南ア格付けを読む(1)。

 

 

こんばんは、品川です。昨日、日本時間の朝方(2018年)5月26日土曜日5:14、格付け機関のS&Pこと、スタンダード&プアーズが、南アフリカランドに対する新たな格付けを発表しました。

 

3月のムーディーズの格付けが、それなりにポジティブな成果を収めたものであっただけに期待が掛かっていたのですが、結果は「変更なし」でした。

 

本連載では、今回のS&Pの格付けを辿りながら、現在の南アフリカランドの国際的評価を考えてみようというものです。

 

連載第1回目です。

 

 


・外貨建て?自国通貨建て?


 

S&Pの記事のタイトルは、

 

South Africa Foreign And Local Currency Ratings Affirmed At ‘BB’ And ‘BB+’; Outlook Stable

南アフリカの外貨建て格付けはBB、自国通貨建て格付けBB+。見通しは安定的。

 

となっています。(リンク先は会員に成ってないと読めません。S&Pの格付けの仕方については、こちらを参照。)

 

ここで気になるのは、「外貨建て格付け(foreign currency rating)」「自国通貨建て格付け(local currency rating)」という変な言葉遣いでしょう。

 

情報として直ぐに消化したかったら外貨通貨建て格付けの方だけ見ておけばよいと思います。前回大きな話題を呼んだ2017年11月25日「ジャンク債格下げ」の際も、メディアで主に取り上げられたのは外貨通貨建て格付けの方でした。

 

「外貨建て格付け(foreign currency rating)」と「自国通貨建て格付け(local currency rating)」については、次のような説明がされています。

 

外貨通貨建て格付けとは、発行体が、償還日に外貨建てで債務を返済できるかどうかの能力を示している。

Foreign currency ratings refer to an entity’s ability and willingness to meet its foreign currency denominated financial obligations as they come due.

 

 

自国通貨建て格付けとは、償還の際使用する通貨は抜きにして、単純に時間の問題として、発行体が償還日に債務を返済できるかどうかの能力を示している。

Local currency ratings are an opinion of an entity’s ability and willingness to meet all of its financial obligations on a timely basis, regardless of the currency in which those obligations are denominated and absent transfer and convertibility restrictions.

 

言葉の定義としては分かりやすい説明ですね。

 

では、実際の格付けとしてはどのように機能しているのでしょうか。

 

大和証券さんの説明が分かりやすいです。

 

S&Pは、これまで外貨建て格付けよりも自国通貨建て格付けに、高い格付けを付与していました。これは、歴史的に自国通貨建ての債務の方が外貨建ての債務よりも、デフォルト(債務不履行)率が低かったことによるものです。しかし、S&Pは「マーケットのグローバル化が進み、自国通貨建て債務の外国人投資家による保有が増加する中で、各国政府の自国通貨建てと外貨建て債務の返済意思にほとんど違いがないと思われる」と説明しています。そのため[米現地時間2011年6月30日に行われた]変更で、これまで外貨建て格付けに比べて最大3段階まで認められていた自国通貨建ての格付けの格差を、2段階までとしました。これにより、格差がある発行体のうち約半数で、その差が縮小するとされています。

 

当たり前の話ですが、自国通貨建ての方が債務は履行しやすいです(外貨を調達する必要がないのですから)。従って、自国通貨建て格付けの方が良くなります。

 

米現地時間2011年6月30日にS&Pは、外貨建て自国通貨建ての格付け差異を2段階までとしましたが、依然として「自国通貨建て有利」には変わりありません。

 

今回(2018/5/25)の格付けで、外貨建て格付けはBB、自国通貨建て格付けBB+となったのは、そういう事情によります。

 

 


・2017年11月25日「ジャンク債格下げ」ショックを振り返る。


 

最後に、S&Pによる2017年11月25日「ジャンク債格下げ」ショックを振り返っておきましょう。

 

ロイターの文章です。

 

[ヨハネスブルク24日ロイター] S&Pグローバルレーティングは24日、南アフリカの現地通貨建て債券格付けを「BBB-」から投機的等級(ジャンク級)となる「BB+」に引き下げた。経済見通しと公的財政の一段の悪化を反映したとしている。

これを受け、南アフリカランドは対ドルで14.1250ランドと、1.5%以上下落した。

S&Pは南アフリカの外貨建て債券の長期格付けも「BB+」から「BB」に引き下げた。

格付け見通しは現地通貨建て、外貨建てともに「安定的」。

このほか、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは南アフリカの格付け「Baa3」を引き下げ方向で見直すと発表した。(品川:この件の顛末については、この記事参照。)

ムーディーズは南アフリカの経済、財政上の課題は予想より深刻である可能性があると指摘。短・中期的な政治的な優先事項を巡る先行き不透明性により、南アフリカに対する投資家の信頼感は2009年以来の低水準に落ち込んでいるとの見方を示した。

 

 

S&Pやムーディーズ(またフィッチ)の格付けのスタイルについては、こちらの記事をご参照ください。

 

「自国通貨建て格付け(local currency rating)」「現地通貨建て」とも訳されるみたいですね。

 

それにしても何回読んでも身の毛のよだつ出来事です。

 

・・・・・

 

それでは、今回はここまでです。

 

次回はS&Pの文章に入って行きたいと思います。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m

 

(編集部注:本連載はこの記事に受け継がれました。ご迷惑おかけしたことを謝罪いたします。)

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