2018年の南アフリカランドを占う。その4(終)

(「シリルラマポーザANC新党首」
出典:Wikipedia)

こんばんは、品川です。昨年暮れ、2017年12月18日にANC党首選で、シリルラマポーザ(Cyril Ramaphosa)氏がANC新党首に就任してから、南アフリカランドに対する「多幸感(ユーホリア euphoria)」とも形容される事態が続いており、目下のランドに対する市場の注目は、「既に市場はズマ退陣を織り込んでいるのか?」「ラマポーザに変わっても南アフリカ経済不調は変わらないのか?」といった上値抑制に向かっている印象があります。

前回「格付け会社の発表をチャートに即して見てみたい」などと呑気なことを言っていましたが、思ったより政局の変転が目まぐるしく、やはりランドのファンダメンタルズに対する情報を整理し、本連載は一旦、閉じることにしたいと思います。

連載最終回です。


・もう一段伸びると思う。


私自身は、ズマ退陣後にはランドは上がって行くと考えています。近年のランドの不調の原因は、ズマ大統領の財政基盤を考慮に入れないポピュリズム政策にあり、ラマポーザ氏に交代することによって、要は、ズマ大統領の「ご乱心」がなくなる・・・このことは、大きいと思います。

では、ズマ大統領のご乱心として、何があったでしょうか。

本記事で振り返ってみましょう。


ズマ乱心1:ゴーダン財務相解任。


(「ゴーダン元財務相」出典:Bloomberg

クリックで移動します)

ズマ大統領のご乱心。

ひとつ目は、2017年3月27日に、南アフリカのジャンク評価回避に尽力して来たゴーダン(Pravin Gordhan)財務相(を含め9人の閣僚)を突如解任したことです。

市場は、ゴーダン財務書を南アフリカ財政の「良心」とみなして来ました。それが取り除かれたのですから、あとに残るのはズマ大統領のポピュリズムの人気取り出鱈目財政しか無いわけです。

この件については、また記事を改めて深く掘り下げてみたいと思います。


ズマご乱心2:教育無償化。


(官報:クリックで移動します)

ズマ大統領のご乱心。

ふたつ目は、いろいろなところで取り沙汰されているとおり「教育の無償化」です。

この件については、2015年ごろから火種があり(参照)、或る意味、ズマ大統領のポピュリズムの一翼を担って来ました。

ズマ大統領も、この問題が自分の支持力回復の切り札のひとつと考えている節があり、2017年の11月16日に、こんな「ご乱心」声明を出してしまいました。

「低所得者層」を再定義したうえで、政府は今や、低所得世帯出身の学生に対する高等教育の無償化を導入することを考えています。それは2018年から開始され、国公立大学の新入生にまず適用されるでしょう。

Having amended the definition of Poor and Working class students, government will now introduce fully subsidised free higher education and training for poor and working class South African undergraduate students, starting in 2018 with students in their first year of study at our public universities. Students categorised as poor and working class, under the new definition, will be funded and supported through government grants not loans.

あらゆるところで、ズマ大統領の権謀術数が見え隠れしますね。


・日本の報道は疑わしい。


このようにズマ大統領が解任されることは、政治的経済的不安定を取り除く大きな効果があり、それ(ズマ解任)によるランドへの信頼回復は大きなものが期待されます。

ただ、日本語メディアでは最近、「ズマ解任は織り込み済みで、ラマポーザの経済政策もよく見ると懐疑的」という意見が飛び交っています。

本当でしょうか。

私は、あまり日本語媒体の報道は信じられないと思っています。

例えば、次の報道を見てみましょう。

2018-1-10:19:06 南アフリカランドは今年の安値更新、大統領早期辞任も織り込みか。

南ア・ランド(ZAR)円は今年の安値を更新し、8.96円まで下落している。来週17日にアフリカ民族会議(ANC)の会議で、ズマ大統領の早期辞任について話し合いが行われる可能性があると現地紙は報じているが、すでにズマ大統領の早期辞任については市場は織り込みつつある。ラマポーザANC議長の長期経済政策は、投資家から経済成長を維持するには具体性があると思われていたが、ここ最近は投資家から、南アの現状はそれ以上に厳しく、困難に直面するという意見が出始めている。

この記事でも誤報を指摘したFX-WAVEの短信です。

このFX-WAVEの短信の誤りにお気づきでしょうか。

時刻を見て下さい。「2018-1-10:19:06」と成っています。これは、2018年初めの大イベント、ズマ解任騒動に決着がついた(ズマ解任はこの日に実現しなかったーこの記事参照)時刻を指しています。

しかし、FX-WAVEは、その事情にまったく言及しないまま「来週17日に」というチンプンカンプンな日付を指摘したうえで「ラマポーザANC議長の長期経済政策は、投資家から経済成長を維持するには具体性があると思われていたが、ここ最近は投資家から、南アの現状はそれ以上に厳しく、困難に直面するという意見が出始めている。」と締めくくっているのです。

これではダメではないでしょうか。

私は、最近、日本のランド解説でよく目にするこの類の「ラマポーザ懐疑論」が、単なる誤認識から生じているのではないか、と眉に唾しています。


・ランドのファンダメンタルズから目が離せない。


こういった日本メディアの誤報を考え入れると、やはりBloombergやCNNなどの外国のニュースを手掛かりにしながら、できれば現地南アフリカの情報も参照し、状況を理解して行くのが適切だと言えるでしょう。

あまり純日本語媒体には踊らされないのが賢明だと思われます。

もちろん、南アフリカの政局は、本サイトでもこれから順次キャッチアップして行くつもりです。

・・・・・

それでは、本連載は一旦ここで閉じ、別記事から再び、南アフリカの政局を追って行きたいと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。