東名夫婦死亡事故に見る進路妨害の問題。その4(終)

(「石橋和歩容疑者」佐藤栞氏撮影:朝日新聞

こんばんは、編集長です。

私の担当は「政治」ですが、広く社会問題を扱って行きたいと思っています。つまり、本サイトのタイトルにある「ニューズオールズ」に一番近い内容です。

そのようなものとして、2017年6月東名高速道路で起きた荻山さん夫婦死亡事故を扱っています。

連載第4回目最終回です。


・菊間千乃さんの持論


(クリックで該当記事に移動します)

楽天インフォシークニュースによると、元フジテレビアナウンサーで弁護士の菊間千乃さんは、今回の東名夫婦死亡事故について「過失運転致死傷(罪)になると思います」とバッサリ切り捨てた様です。

このコメントは、今回の事故の焦点である「石橋容疑者は逮捕時の過失運転致死傷罪どまりか、それとも更に危険運転致死傷罪を問えるか?」という問題に向けられており、それに対するネガティブな意味合いを持っています。つまり、より重罪である「危険運転致死傷罪」に石橋容疑者を問えない、ということです。

確かに、リーガルマインドというか弁護士としては的を得た見解だと言えるでしょう。

しかし、民放の出演者としては失格で、そんな法実務的な意見ではなく「なぜ石橋容疑者をもっと重い罪に問えないのか」という人々の感情の観点からコメントが為されるべきだったのです。

この点で、前回扱った山本譲二さんのほうが視聴者にとっては好ましい出演者だったと言えます。


・法律上の焦点


菊間千乃さんの持論もそうですが、現行の自動車運転処罰法(自動車運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律;2014年旧刑法より独立)では、東名夫婦死亡事故のケースについて、石橋容疑者「過失」ではなく「危険」運転致死傷罪として罰することは難しいようです。

条文を見れば分かります(自動車運転処罰法より抜粋)。

第二条(危険運転致死傷
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
第四項
人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

事故はトラックによって引き起こされたものであって、その事故の瞬間、石橋容疑者は「自動車を運転する行為」をしていませんでした

この微妙なタイムラグのため、石橋容疑者は危険運転致死傷罪で立件できないわけです。

ついでに、石橋容疑者が逮捕された過失運転致死傷罪についての条文も見てみたいと思います(自動車運転処罰法より抜粋)。

第五条 (過失運転致死傷のケース)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

上掲の第二条第四項(危険運転致死傷罪)と、この第五条(過失運転致死傷罪)の違いは分かりにくいと思いますが、第二条第四項のほうは明らかに「運転している」という動態的な行為を罪状成立の条件としています。

だから、石橋容疑者危険運転致死傷で問えない、という結論に至っているわけです。


・進路妨害行為を飲酒運転と同じように罰して欲しい


しかしながら、東名夫婦死亡事故で問題とすべきなのは、危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪といった刑法上の境界線よりも、進路妨害行為そのものにあると私自身は考えています。

ご承知のとおり、危険運転致死傷罪だとかそういったもの事故が起きてからでないと問うことができません

例えば、進路妨害行為したのに何も起こらなかったなら、それは、自動車運転処罰法(刑法の一種)の管轄外に成ってしまうわけです。

そうすると出て来るのが、道路交通法です。これによって、進路妨害行為を罰するしかない。

・・・しかしそれはいかにも迫力の無い話ではないでしょうか。

いや、たとえ道路交通法でも飲酒運転だと一発免停です。この辺りに成ると、法としての凄みも出て来ます。

けれども、進路妨害行為はどうでしょうか。せいぜい急ブレーキ(減点2点罰金7,000円)だとか、安全運転義務違反(減点2点罰金9,000円)だとか、そんな話に成らないような軽い罪で終わってしまっています。

私は、そこを何とかするべきだと思っています。

法務的には実現不可能に近い話ですが、進路妨害行為に対しては飲酒運転並みの罰則(減点25点)を科して欲しい。そして二度と免許を取れなくして欲しい

進路妨害行為は、警察が思っている以上に道路上に蔓延しています。そして警察が思っているより遥かに危険です。

「危険度において、進路妨害行為は、飲酒運転と同じくらい、いやそれ以上の危険性を伴っている。」このことを認識して頂きたいというのが私の願いであり、本連載での結びの言葉に成ります。

以上で、本連載は終わりです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。